難しいアマチュア・コンクールの評価

ピティナのグランミューズ決勝大会の審査、ついに終わりました。二日間でした。私としましては特級セミファイナルからの連チャン、無事生還です。グランミューズはアマチュア部門。審査は今日、二日目のほうが少し楽だったかなあ?今日は若い人たちだったので、基礎力もあり聴きやすかったです。結果もスッキリしています。連弾の結果はさらに分かりやすい。

演奏というものは、自分以外の誰かのためにあるものです。アマチュアだとどうしても自分のために弾いてしまったり、人に伝えることを忘れてしまったようなことにもなりがち。アマチュアなんだから、そんなこと言わなくても良いと言えば良いのですが(笑)、コンクールとなるとね、微妙ですよ。今日も「弾けた弾けない」「うまいまずい」よりも、その根源的なことで勝敗がついた感じでした。入賞者はそれぞれ良かったと思います。選外でもサンサーンスのアレグロ・パッショナートの人も軽やかで良かったと思います。バッハ=リストはもっと構成が良ければ、結果は違ったと思いますね。プーランクとスクリャービンの方は曲の求めている内容と全く違う演奏で、曲の解釈の問題。やはり濃密な曲は、優れた先生のもとで緻密に学び、さらに本人が同化出来ないと成果は得られないものです。もっとシンプルな曲を選べば結果も違っていましたね。総じて今日の人達は若い方々ですし、いろいろ未来に可能性がある人ばかりでした。

さて昨日(19日)の人たちはオタク色満開(笑)、それとも妙に「コンクール慣れ」されているのか、ちょっと審査もやりにくい状況でした。「コンクールに出る以上は勝ちたい」と思うのはあたり前、でも尻尾をつかまれないような微妙なレパートリーで、ごまかしてでも入賞したいというのは?・・・それで入賞して意味があるのだろうか?・・・・特に音楽を愛するアマチュアの精神としては?いかがなものなんでしょう~~審査員全員が話題にしていました。別の言葉にすれば、そこに「伝えたい」と言うような強い思いが感じられなかったために、奇をてらっているだけに聴こえてしまったということでしょう。誤解のないように申し上げますが、そうは言ってもですよ、さすが全国大会のレベルの高さです。

バラキレフのノクターンの人、ドヴォルザークの人、ヒナステラの舞曲の人は入賞されても良かったですね。気持ちや「歌」が充分伝わる良い演奏でした。同じ意見の審査員もいましたね。とても残念でした。前のお2人はもう少し冴えた感じがあれば。ヒナステラは2楽章の主題の歌い回し(色彩)と曲の構成の問題です。またラフマニノフの練習曲を並べた方は、曲順が原因。最後に有名な1曲が来て、それが強い主張で歌いきれないうちに時間切れで、水没した印象で終了。とても惜しかったです。チャイコフスキーの小品なども曲が損ですね。またアルベニスは日本では精緻な技巧の極みのジャンルに思われていますが、実際は民族的なよたろう節です(笑)。味のない端正な演奏をしてしまう人が多く、やはり点が採れないですね。王道のロマン派に挑戦された方は様式を感じさせませんでした。アマチュアといえどもきちんと様式を踏まないと絶対にまずいですね。これは正統な先生のもとで研鑽を積むしかありません。

あと19日は、サンサーンスのアレグロ・パッショナートを弾かれた人以外の男性陣は全員、優勝・入賞された方も含めて、タッチがスカスカだったり、音が通らなかったり、逆に無秩序に音量が膨らんでしまったりと、根本的な基礎の欠如が明らかでした。これはどうしたものかとても悩みました。とりあえず音符はちゃんと見事に弾けてはいるのですよ(笑)。でも実のところは、そんな難しい曲を弾いている場合ではない(笑)、何しろ「まともなピアノの音」ではないのですから。正式なピアノコンクールではイの一番に落とされる「チャラチャラ弾き」というのに似ています。くれぐれも申し上げますが、これは揶揄しているのではありません。それ以上に事実なんだし、相談されれば基礎からやり直すことをもちろんお勧めします。これはテクニックのコントロール云々の問題ではなく、独学の間についた癖のようなものなのでしょうね。とりあえず昨日の段階では、とやかく言ってもはじまらないので「アマチュア・コンクール」ということでスルー。でも本当はどう評価すべきなのか、どうしてあげるのが一番親切なのか、難しかった。このままで良いと思われてしまうのもね・・・・いけないと思う。私は微妙に点数に反映させるにとどめました。女性陣にはこういう現象があまりないのも面白いですね。

こういうこともあります。「ナゼル」で賞をとられた方は、とても良い演奏をして文句ないのですが、実は「ナゼル」はもっともっと素敵な曲なんです。その秘めたる部分を知ってこそ楽しさが広がるのに、このまま賞をとったらここで満足して、それを知らずに一生終わることだろう・・・・それは人生つまらないよね・・・・と、2点ぐらい減点しておきました(笑)。ごめんなさい。

というように、アマチュアコンクールに限っては、審査の基準は審査員それぞれに事情があって、ある意味とても面白いものです。受けた人にとっては、たまったもんじゃない(笑)、それも出会いと運命。もともとコンクールなんて審査員の都合で出来ているものだと以前から申し上げている通りです。なので結果など気にすることはなく、今後も日々前進あるのみ!です。皆さま、お疲れさまでした。ぜひ再度の挑戦をお待ちしています!!
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by masa-hilton | 2012-08-20 22:47 | 音楽・雑記
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