ドイツ:ロシアのスパイ夫婦に有罪判決 古典的手口使う
毎日新聞 2013年07月16日 11時10分(最終更新 07月16日 13時26分)
【ベルリン篠田航一】ドイツで東西冷戦時代から通算20年以上、ロシアのスパイとして活動した夫婦が摘発され、独南部シュツットガルトの裁判所で有罪判決を受けた。取り調べ段階から完全黙秘を貫く筋金入り。米国家安全保障局(NSA)による盗聴などハイテク情報戦が注目されるなか、極秘情報の入ったUSBスティックを森の中の受け渡し場所に置くなど「古典的な手口」(独メディア)も話題となっている。
報道によると、夫婦は今月2日、スパイ活動従事罪で禁錮5年半〜6年半の判決を受けた。買収したオランダ外務省職員から、北大西洋条約機構(NATO)などの機密情報を入手。ロシア側と顔を合わさず受け渡しをするため「デッドドロップ」といわれる手法でUSBスティックをやり取りしたり、動画サイトに暗号を投稿したりして、情報を伝えていた。
2011年10月にドイツ当局が家宅捜索に踏み込んだ際、ロシアからの指令を受けるため、夫は短波放送を聴いている最中だった。こうした伝統的な手法にドイツでは「まだそんなスパイがいたのか」と、驚きをもって伝えられている。
夫婦は50代とみられ、ドイツ語で「襲撃」「陰謀」を意味するアンシュラークという姓を名乗っていた。オーストリアのパスポートを所持し、冷戦末期の1988年以降、旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の指示で旧西独に順次入国した。
しかし、本名も経歴も謎のままで、実の娘(22)まで両親がスパイとは知らなかった。ソ連崩壊後はロシア対外情報庁(SVR)の指示で活動を続け、年間10万ユーロ(約1300万円)の報酬を得ていた。