2000年に入ってから、「失われた10年」がいわれ、2010年になると「失われた20年」といわれるようになった。日本経済がこのように長く不振が続くことは過去にはなかった。GDPの60%弱は消費支出が占めているが、消費支出の基礎になる、1人平均月額給与総額は2000年と2010年と比較すると約10%下落している。特に、この中で、労働人口の70%を占める中小企業従業員の下落が大きい。また、大企業であっても賃金の安い非正規労働者の増加がある。特に、今まで多くの労働者を吸収してきた製造業における収益性の低下の影響が大きく出てきた。GDPは国内で新たに生産されたモノやサービスの付加価値で定義されるように、日本の産業が付加価値を生まなくなってきていることが指摘できる。このことは、日本の産業構造の転換が遅れている証といえるだろう。
高度成長期の成功体験を捨てられずに今日まで来ていることを示しているようだ。経済環境が大きく変化しているのにかかわらず、従来型労働集約型産業は既に日本では産業として維持することは難しくなった。また、日本が標榜してきた「ものづくり」も対象となる製品が大きく変化してきた。高度成長期の「ものづくり」とは大きく異なっている。単に政府や政党が「ものづくり」をスローガンに掲げても、その「ものづくり」だけで生き残れる時代ではなくなった。今後、GDPを成長させるにはどのような戦略をとればよいのであろうか。この答えは日本経済の戦略そのものと考えられる。
今後の経済活力、人口減少から推定、1人当たりのGDPを上げることは非常に難しい。本来、1人当たりのGDPを上げることは国家の基本戦略のひとつである。同じように、日本企業の売上高営業利益率の推移を見てみると、製造業、非製造業ともに下落傾向が読み取れる。営業利益はビジネスにおける最も基本的な利益であり、操作性が少ない利益である。営業利益段階で赤字になるのであれば、対象となるビジネスの将来性は期待できない。