どんなことがあっても、『生き残る』ことを選択し、事業と人生を諦めないと決めた限り、事業を維持するために最低限必要な資産や、家族や人生を守るために必要な資産を保全しなければ、近い将来に、それらの必要資産は手元から流出してしまい、生き残ることが出来なくなるかもしれません。
そのためには、断固たる決意で、早い段階からの予防保全の対策が必要となります。
経営健全時における資産の予防保全は極めて有効ですし、早い段階からの予防保全は、時効等の法律で保護される場合が多いことを理解してください。
会社及び連帯保証人の資産に関する情報は、債権者や第3者にできるだけ漏らさないことが大事です。
借りないことが予防の第一歩ですが、借入するときには返せない場合を想定した考え方が、万が一の危機を救います。
予防保全を実行する場合には、知識を充分に習得したうえで、『生き残る』ために断固たる決意で具体的に実施してください。
予防保全は、万が一の時に、必要な資産を維持するために実行するものですから、債権者の法的手続き等の動きを理解することが大事です。
金融機関の営業担当の行員は、常に貴方の会社を見張りに来ていると考え、不必要な情報は流さないようにしてください。
普段の会話の中で、債権回収のための色々な情報を集めています。そして、収集した情報は顧客情報として整理され、債権回収のために活用されます。
色々な資料の提出を求めてきますが、最低限の提出にとどめ、必要の無いものは極力提出しないことです。
特に、債権者である金融機関が知らない資産関係の資料は絶対に出さないことです。
連帯保証人は、主債務者と同等の義務を負うことを肝に命じ、万が一のことを想定して対応することが大事です。
第3者の連帯保証人がどうしても必要な場合は、最小限の特定の人に絞り、会社の役員や取引先の社長を連帯保証人にすることは避けてください。
また、代表者の親族が連帯保証人になる場合も十分に検討し、子供さんを連帯保証人にすることは極力避け、代表者の家族全員が連帯保証人になることは絶対に避けてください。
最近の傾向として、複数の連帯保証人を要求されることは減少しましたが、どうしてもの場合は、不動産等の資産を持っていない親族に依頼することが最悪の事態を回避できます。
連帯保証人を守ることは、最大に優先すべき事項と認識し、早い段階で真実を説明し胸裏を開いてもらい、連帯保証人の資産についても予防保全が必要です。
当然のことですが、担保の提供は最小限に抑えるように金融機関と交渉してください。
余分な担保は出さない・教えないことが原則です。
信頼できる親族からの借入に対しては、積極的に担保を提供することが予防保全につながります。
詐害行為とは、債権者の権利を侵すことを知りながら、資産等を保全する行為です。
健全な状態(債務超過になっていない経営状況)にあるときに成された行為は、詐害行為とは考えにくくなります。
債権者が詐害行為に疑いを持った場合は、詐害行為取消請求の裁判をしてくることになり、詐害行為と認められれば現状に復すことになります。
また、詐害行為取消請求権にも時効があり、20年で取消請求件は消滅します、ただし、債権者がその行為の事実を知ってからは2年で消滅します。
経営危機環境において、資産の予防保全は極めて重要なことでしょうから、詐害行為を充分に理解した上で根拠を明確にして取り組みましょう。
リスケジュールを依頼する状況になれば、会社や代表者そして連帯保証人等の資産を維持するために予防保全を検討する必要があるでしょう、
限られた時間の中ですが、徹底的に対応すべきです。
予防保全対策には次の3原則があります。
◆ その資産を知られない
◆ その資産の名義が違う
◆ その資産に価値がない
◆ 現金・預金
◆ 不動産
◆ 有価証券・会員権等
◆ 生命保険
◆ 家賃・保証金
◆ 車両・機械等の動産
◆ 売掛金 ( 得意先 )
◆ その他
◆ 預金口座について
銀行は、支店毎の差押えが必要となり、信金信組は本店だけ,郵貯銀行は都道府県内1箇所の差押えで都道府県内の全ての支店の口座が差押えが可能となりますので、自宅・事業所所在の市町村を避けて、債権者の知らない銀行の口座を活用されることをお勧めします。
◆ 不動産について
信頼できる知人や親族等からの借入金に、根抵当権を設定し無剰余(担保・差押え価値がない)にする。
売却可能な不動産は、事情を知らない善意の第3者に売却譲渡し、手元資金を確保する。
売却可能な不動産を、事情を知らない知人や親族等に売却譲渡し、将来的な買戻し等を模索したり、賃貸借契約により維持する。
債権者の知らない不動産資産は絶対に教えない。この場合は、名寄せ帳に注意
◆ 有価証券・会員権等について
債権者に知られているものは、売却して現金化して保全する。
◆ 生命保険について
生命保険は、解約請求権が差押え可能となる。
債権者に知られているものは、解約し現金化するか、積立性があれば満額借入をする。
個人の場合は、連帯保証人でない配偶者等に譲渡し、契約者を変更する。
◆ 車両・機械等の動産について
知られており必要性の少ないものは、売却して現金化する。
必要なものは、動産譲渡登記制度等を活用し保全する。
◆ 収益性のある不動産
家賃は、定期的に収益の上がる貴重なものです。 出来るだけ長く維持しましょう。
家賃は不動産に付随したもので、抵当権があれば債務名義無しで家賃の差押えも可能。
差押には賃借人のフルネーム必要ですので、絶対に教えないこと。 確定申告に注意
◆ 売掛金について
入金を急ぎ、保全する。
売掛債権譲渡契約等により保全する。
◆ 給料等について
主債務者や連帯保証人の給与等は差押えの対象となります。
退職金も同じく差押さえの対象となります。
給料等は、標準生活費までは4分の1が差押えの対象となります。
標準生活費を超えた場合は、超えた額か給料の4分の1かの多い方が差押え可能です。
裁判所が給与等の差押えを1度許可すると、1年間は自動継続で有効となります。
差押えされた場合は、雇用主に依頼して対策を執るしか方法はありません。
◆ 年金について
厚生・国民年金や遺族年金は、差押えできません。
しかし、入金になった口座にそのまま置いておけば、預金として差押え可能となりますので、口座に入金すれば直ぐに引き出す必要があります。
資産の予防保全対策を実行するには、その後に起こる事象を理解し、様々に留意しなければならない内容があります。
予防保全対策は、債権者から自己資産を守る対策であり、債権者が執るべき手段は競売か差押え等しかありませんので、その対策となります。
資産の予防保全対策を執る理由は、代表者の為ではなく、従業員やその家族を守るため、そして連帯保証人や代表者の家族を守り、事業を維持するためだと理解してください。
債権者は、業務上のプロとして債権を保有しており、当然リスクも考慮して連帯保証人や十分な担保を保有しているのですから、臆せず誠心誠意、資産の予防保全対策に取り組んでください。