ボーナス払いを境に、住宅ローンの返済ができなくなる世帯が急増するのではないかと危惧するものです。
ボーナスどころか収入激減のサラリーマンも増えていますからね。
そこで今回は、住宅ローンが返せなくなったときの基礎知識を、時系列的にごく簡単に述べたいと思います。
(1) 1日遅れたらどうなるか?
− 特に何も起こりません。一括請求にも差押にもなりませんので安心してください。せいぜい、引き落とし不能になったことで銀行から電話かお手紙が来て、早めの入金を迫られる程度です。もちろん暴力的な取立ても皆無です。
(2) 1週間遅れたらどうなるか?
− 同上。
(3) 1ヶ月遅れたらどうなるか?
− おおむね同上。但し、電話とお手紙の頻度、ならびにその内容は少々厳しくなります。期限の利益喪失(=一括請求)になるまで、まだ少し猶予があると思っていいでしょう。
(4) 3ヶ月以上遅れたらどうなるか?
− この頃から「期限の利益喪失」(=一括請求)が現実味を帯びてきます。 尚、契約書には1ヶ月遅れただけで期限の利益喪失になっている銀行があったり、3ヶ月のところがあったりしますが、こと住宅ローンに関しては、銀行さんは契約書どおりに一切の猶予もなくキチンと一括請求してくるところはごく少数なのが現状です。 それよりも「損得勘定」で柔軟に決めていることのほうが多いものです。 期限の利益喪失になるまでの期間が人によって3ヶ月のこともあれば6ヶ月以上のこともあるのは、そのためです。
(5) 一括請求されたらどうなるか?
− 民間銀行の場合は保証会社に代位弁済になることが多いですが、代位弁済になって、保証会社が銀行に残債全額を肩代わりしてくれても、その後、保証会社からあなた宛てに「うちが立替えた分を全額払って下さい。さもなくば競売ですよ」と言ってきますので(これを求償権請求といいます。民法で、保証人は主債務者に対して自分が肩代わりしたお金を返せと請求する権利が認められているのです。それが求償権です。保証会社はあなたの保証人代わりというわけです・・・)、結局のところ、一括請求されるという点は同じです。
ちなみに「期限の利益喪失」とは、噛み砕いて意訳すれば、「分割払いのメリット(期限の利益)を喪失する」という意味ですので、要するに一括請求となるわけです。
ここまでくると、もう元の返済条件には戻せません。戻せるとしたら個人再生手続きくらいです。(個人再生手続きでは期限の利益を喪失してから6ヶ月以内なら回復を認められている。) 個人再生が使えない状態の人は、この段階まできたら、任意売却や競売などを駆使した解決方法を模索することになります。
(6) 競売になるまでの間に起こること
− 一括請求に応じられないからといって、交渉の余地もなくただちに競売になってしまうことはほとんどありません。 だいたい一括請求されてから早くても半年近く、遅いときは1年以上かかって、やっと競売開始になります。その間、任意売却やら何やらと交渉の余地があります。
多くの場合(十中八九)、競売開始になる前に、銀行さんは「任意売却」を勧めてきます。(ここに解決のための大きなターニングポイントがあります)
(7) 競売になるとすぐに追い出されるのか?
− なりません。競売開始決定(ペラペラの封筒が裁判所から来る)から入札(オークション開始)までだけで、軽く半年近くはかかるのが普通です。その間、家はあなたのものです。赤紙を貼られたりロープで閉鎖されたりしません。堂々と住めます。
(8) 売却後に残った借金は請求されるのか?
− 請求は必ずされます。請求はね。必ず。
でもわたしは言いたい。 「請求が来たぐらいでガタガタ騒ぐな!」 と。
担保の家を処分したうえ、残債を請求しても支払いがないとなると、銀行はそれを「不良債権」として位置づけます。文字通り、不良な債権です。そして、不良債権は「処理」される運命にあります。「回収」じゃなくて「処理」です。
民間銀行の場合、処理のしかたの多くは、サービサーへの債権譲渡です。もちろん二束三文です。(以後説明省略)
公庫など公的金融機関の場合はそう簡単に債権譲渡しませんが、これはこれで傾向と対策があります。
結論。住宅ローンが返せなくなっても、そんなに怖くない!
〇月危機!? 一部のマスコミさん、あまり煽っちゃいけませんよ。自殺者が増えたらどうすんですか?
〇月にローンの返済ができなくなっても、実際に家を失うのは早くても来年の下半期以降ですよ。それまでにやれることはまだまだいっぱいある!返せなくなったら、慌てず騒がず、まずは落ち着いて現状把握と情報収集すべし!
以上のことを詳しく書いた本が2冊あります。困っている方は是非お読み下さい。
ひとつは手前味噌で恐縮ですが、2007年12月に出した 『働けません。』(三五館) という本です。全6章からなる共著で、そのうちの1章をまるごと住宅ローン対策に絞ってわたしが書きました。上記の時系列的な傾向と対策を詳しく書いています。
働けません。―「働けません。」6つの“奥の手” (2007/12) 湯浅 誠 春日部蒼 李尚昭 吉田猫次郎 ほか 商品詳細を見る |
もうひとつは、故田崎達磨先生が2005年に書いた『住宅ローンで死ぬな!』(WAVE出版)という本です。これは一冊まるごと住宅ローン対策です。やや古い本ですが今でも8割以上は通用する内容です。
住宅ローンで死ぬな!―返済苦100%解決法 (2005/11) 田崎 達磨 商品詳細を見る |
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