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住宅ローン(その1)〜返済が遅れるとどうなるか?HEADLINE

<2004年11月17日付 吉田猫次郎のメルマガ 第84号より>

◆ いまだに多くの方が、

「住宅ローンの返済が遅れたら、すぐ競売になり」
「赤紙をペタペタ貼られ」
「家を失って」
「借金だけが残って、自己破産を余儀なくされる」

と思い込んでいます。

このため、何としても競売を避けようと、クレジットカードのキャッシングや消費者金融からの高金利の借入をしてまでも住宅ローンの返済期日を守ろうとし、その結果、多重債務状態に陥っています。

 しかし、まずこの認識を改めないと、家を守りきることなど到底できません。

 あまり律儀になって能力以上の返済をキチッと続けようとすると、高利に手を出しやすくなり、かえって返済不能に陥りやすくなるものです。 

 逆に、少しマイペースになったほうが、無理な資金繰りに時間と労力を奪われず、仕事に専念でき、物事の本質を見据えることができますので、長い目で見て、借金完済が実現可能になり、大事な自宅を守り切ることができます。

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◆ 住宅ローンの返済を少しでも遅れると、銀行はこう言ってきます。
 (某大手都市銀行の督促状より抜粋)

「返済を遅れると、代位弁済になります。」
「代位弁済になると、14%の金利が適用されて、あわせて『一括返済』になります。」
「一括返済になると、自宅を任意で売却して頂いて、その売却代金で返済してもらう ことになります。もしくは裁判所で競売を申し立てることになります。」
「競売になりますと、ローンの残債よりも低価格で落札されるケースがほとんどです。
 したがって債務額が多く残ってしまいます。また、申請して半年から1年程度時間が かかることもあります。」

 上記の言葉には、たしかに嘘偽りはありません。
 ローンの返済を滞ると、実際、このような流れで進められます。

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◆しかし (ここからが大事!!)、上記の銀行の言葉には、「ウラの意味」が隠されています。

たとえば、このような解釈をすることもできます。

(1)「低価格で落札されるケースがほとんどです」

 → 競売後の残債務は無担保債権なので、競売後は「競売しますよ」という取り立て文句は通用しない。はっきり言って、無担保債権は借り手に開き直られたらオシマイ。(実際、競売で家を失った人はその後の返済が著しく困難になるし、気持ちの割り切りも早くなる傾向が強い。)
 よって、本当は、競売で損するのは銀行のほうである。銀行は本音をいえば競売などしたくない。

(2)「競売は申請してから半年〜1年かかることもあります」

 → いつ、いくらで売れるかわからない。もし売れても、回収までに長い年月と手間がかかる。
 (注:競売申し立て手続きは時間も費用も大変かかる)
 よって、銀行にとって競売は「できれば避けたい」回収手段である。
 ムリヤリ競売を申し立てるのは、銀行にとって「損してでも切り捨てる(=略して「損切り」)に近い判断であるといえる。」

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◆ 銀行も「損得勘定」で動いています。「感情」で動いていては銀行マンは勤まりません。
 銀行はとっても「お堅い職場」です。
 でも、(特に民間銀行は)利益追求が優先されます。
 よって、自行にとって不利益になる行為よりも、利益になる行為を選択します。当たり前ですね。

 そしてまた、住宅ローンの延滞者に対してすぐに競売を申し立てることが、イコール銀行の利益にはならない場合も多々あります。
  そのような場合、銀行は慎重に検討して、多少遅れながらでも毎月払ってくれる客や、大幅に遅れていても近い将来に遅れを取り戻せる見込みのある客には、現状維持のほうが(競売よりも)「トクである」あるいは「不利益にならない」と判断し、競売しようとしないものです。

 事実、私が過去に相談を受けた方で、「住宅ローンの返済が遅れて半年以内に競売を申し立てられた」人は皆無に近く、ほとんどの人は返済をストップしてから半年〜1年程度でやっと競売になるかならないかというところまで来ます。

 中には返済を一切ストップしてから2年以上経過しても競売にならず、のらりくらりと任意売却の交渉を続けながら、自宅にフツーに住み続けている人もいます。

 これは大きなヒントです。
もちろん例外はありますが、この仕組みを理解すると、いろいろな場面で応用がききます。

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◆ ですが、これは数あるヒントのほんの一つにすぎません。

「はたして、何が何でも競売を避けるべきなのか?」
「競売ってそんなに悲惨なのか?」
「あなたの自宅は、一生を台無しにしてまで守り続ける価値があるのか?」
「あなたの家の本当の価値(実勢価格)を、あなたは調べたことがあるか?」
「売却後の残債務は永久に残るのか?」
「不良債権処理って何だ?良いことなのか?悪いことなのか?」

・・・と、さらに頭を柔らかくして考えると、もっと明確に、解決の糸口が見えてきます。次号以降でこれを徐々に解説していきましょう。

(メルマガ 2004年11月17日 第84号より抜粋)


<2009年6月22日 吉田猫次郎のBLOGより>

皆さんよくご存知のとおり、最近、「〇月危機」なるものが話題になっています。
ボーナス払いを境に、住宅ローンの返済ができなくなる世帯が急増するのではないかと危惧するものです。
ボーナスどころか収入激減のサラリーマンも増えていますからね。

そこで今回は、住宅ローンが返せなくなったときの基礎知識を、時系列的にごく簡単に述べたいと思います。

(1) 1日遅れたらどうなるか?
 − 特に何も起こりません。一括請求にも差押にもなりませんので安心してください。せいぜい、引き落とし不能になったことで銀行から電話かお手紙が来て、早めの入金を迫られる程度です。もちろん暴力的な取立ても皆無です。

(2) 1週間遅れたらどうなるか?
 − 同上。

(3) 1ヶ月遅れたらどうなるか?
 − おおむね同上。但し、電話とお手紙の頻度、ならびにその内容は少々厳しくなります。期限の利益喪失(=一括請求)になるまで、まだ少し猶予があると思っていいでしょう。

(4) 3ヶ月以上遅れたらどうなるか?
 − この頃から「期限の利益喪失」(=一括請求)が現実味を帯びてきます。 尚、契約書には1ヶ月遅れただけで期限の利益喪失になっている銀行があったり、3ヶ月のところがあったりしますが、こと住宅ローンに関しては、銀行さんは契約書どおりに一切の猶予もなくキチンと一括請求してくるところはごく少数なのが現状です。 それよりも「損得勘定」で柔軟に決めていることのほうが多いものです。 期限の利益喪失になるまでの期間が人によって3ヶ月のこともあれば6ヶ月以上のこともあるのは、そのためです。

(5) 一括請求されたらどうなるか?
 − 民間銀行の場合は保証会社に代位弁済になることが多いですが、代位弁済になって、保証会社が銀行に残債全額を肩代わりしてくれても、その後、保証会社からあなた宛てに「うちが立替えた分を全額払って下さい。さもなくば競売ですよ」と言ってきますので(これを求償権請求といいます。民法で、保証人は主債務者に対して自分が肩代わりしたお金を返せと請求する権利が認められているのです。それが求償権です。保証会社はあなたの保証人代わりというわけです・・・)、結局のところ、一括請求されるという点は同じです。
 ちなみに「期限の利益喪失」とは、噛み砕いて意訳すれば、「分割払いのメリット(期限の利益)を喪失する」という意味ですので、要するに一括請求となるわけです。
 ここまでくると、もう元の返済条件には戻せません。戻せるとしたら個人再生手続きくらいです。(個人再生手続きでは期限の利益を喪失してから6ヶ月以内なら回復を認められている。) 個人再生が使えない状態の人は、この段階まできたら、任意売却や競売などを駆使した解決方法を模索することになります。

(6) 競売になるまでの間に起こること
 − 一括請求に応じられないからといって、交渉の余地もなくただちに競売になってしまうことはほとんどありません。 だいたい一括請求されてから早くても半年近く、遅いときは1年以上かかって、やっと競売開始になります。その間、任意売却やら何やらと交渉の余地があります。
 多くの場合(十中八九)、競売開始になる前に、銀行さんは「任意売却」を勧めてきます。(ここに解決のための大きなターニングポイントがあります)

(7) 競売になるとすぐに追い出されるのか?
 − なりません。競売開始決定(ペラペラの封筒が裁判所から来る)から入札(オークション開始)までだけで、軽く半年近くはかかるのが普通です。その間、家はあなたのものです。赤紙を貼られたりロープで閉鎖されたりしません。堂々と住めます。

(8) 売却後に残った借金は請求されるのか?
 − 請求は必ずされます。請求はね。必ず。
 でもわたしは言いたい。 「請求が来たぐらいでガタガタ騒ぐな!」 と。
 担保の家を処分したうえ、残債を請求しても支払いがないとなると、銀行はそれを「不良債権」として位置づけます。文字通り、不良な債権です。そして、不良債権は「処理」される運命にあります。「回収」じゃなくて「処理」です。
 民間銀行の場合、処理のしかたの多くは、サービサーへの債権譲渡です。もちろん二束三文です。(以後説明省略)
 公庫など公的金融機関の場合はそう簡単に債権譲渡しませんが、これはこれで傾向と対策があります。

 結論。住宅ローンが返せなくなっても、そんなに怖くない!

 〇月危機!? 一部のマスコミさん、あまり煽っちゃいけませんよ。自殺者が増えたらどうすんですか?
 〇月にローンの返済ができなくなっても、実際に家を失うのは早くても来年の下半期以降ですよ。それまでにやれることはまだまだいっぱいある!返せなくなったら、慌てず騒がず、まずは落ち着いて現状把握と情報収集すべし!




 
 以上のことを詳しく書いた本が2冊あります。困っている方は是非お読み下さい。

 ひとつは手前味噌で恐縮ですが、2007年12月に出した 『働けません。』(三五館) という本です。全6章からなる共著で、そのうちの1章をまるごと住宅ローン対策に絞ってわたしが書きました。上記の時系列的な傾向と対策を詳しく書いています。

働けません。―「働けません。」6つの“奥の手”

(2007/12)
湯浅 誠 春日部蒼 李尚昭 吉田猫次郎 ほか

商品詳細を見る


 もうひとつは、故田崎達磨先生が2005年に書いた『住宅ローンで死ぬな!』(WAVE出版)という本です。これは一冊まるごと住宅ローン対策です。やや古い本ですが今でも8割以上は通用する内容です。

住宅ローンで死ぬな!―返済苦100%解決法

(2005/11)
田崎 達磨

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