週現スペシャル 大研究 第1部 第2部 どこまで難しい?東大理Ⅲのテスト 東大医学部(理Ⅲ)に合格した人たち 日本でトップ0・01%の「頭脳」でも彼らは本当に幸せなの?

2013年04月10日(水) 週刊現代

週刊現代賢者の知恵

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 次に英語ですが、東大英語の特徴は、とにかく分量が多いこと。多くの受験生はアップアップしてしまい、すべての問題を解くことさえ困難です。ですが、彼らは反復作業が得意なので、疲れを感じずに解答することができる。

 最後に国語です。彼らは他人の気持ちを理解することが困難なため、国語は非常に苦手とすることが多い。しかし東大の国語では、物語文が出題されないため、論理思考でカバーできてしまうのです」

 まるで招き入れるかのように、東大の入試は発達障害の人向きにできている。東大卒で、アスペルガー症候群を自認するA子さんの告白を聞いてみよう。

「人の気持ちがわからない、ということに気づいたのは中学生の頃でした。自分では仲良しだと思っていた子にべったりしすぎて、避けられてしまったんです。

 考えてみたら、それまで『他人の気持ち』が存在するということさえ認識していませんでした。それから自分はみんなに嫌われていると思って、うつになりました。高校に進学した頃、親の勧めで心療内科に通院を始めました」

 A子さんはしかし、勉強は圧倒的にできた。地元では神童としてちやほやされ、「一度見たページは忘れない」記憶力には誰もが舌を巻いた。その後、さほど労せず東大に合格し、上京を果たす。そして東京の心療内科で初めて、アスペルガー症候群だと診断された。

「東大に入ったら、ふっと楽になりました。地元が嫌いなわけではないけど、怖い。東大にくれば、私は特別じゃない。誰も私に構わない。処方された薬を飲まない日が増えました」

 学生が2割、という伝説に加えて、東大医学部教授のこんな証言がある。

「私見ですが、生徒以上に教授に発達障害の人が多いのではないでしょうか。私は東大教授の半分はアスペルガー症候群だと思っています。教授会などで日々接していて、あまりに頑固で、短気で、空気を読まないので、教授ではなくて患者と接しているのではないか、と錯覚することがよくあるからです。

 ただ、発達障害はその症状によって本人が困っていないと、『障害』とは認定されません。ですから、大学教授という人が羨むポストに就いて、しっかり社会的成功をおさめている以上、彼らがいくら発達障害の症状で周りを困惑させても、発達障害とは認定されないわけです」

 発達障害を抱えていて、A子さんのように気づくケースもあれば、こうした教授たちのように気づかずに生きていくケースもある。ひとつだけ言えるのは、発達障害の人にとって、東大医学部は、「比較的生きやすい場所」なのかもしれない、ということである。

「週刊現代」2013年4月13日号より

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