週現スペシャル 大研究 第1部 第2部 どこまで難しい?東大理Ⅲのテスト 東大医学部(理Ⅲ)に合格した人たち 日本でトップ0・01%の「頭脳」でも彼らは本当に幸せなの?

2013年04月10日(水) 週刊現代

週刊現代賢者の知恵

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 その先輩は嫌われてはいなかったんですけど、サークル内ではなんとなく敬遠されていました。その場の空気に関係なくニヤニヤしたり、生年月日トークをしてきたり、かと思ったら急に女子に告白して、ストーカーまがいのことをしたりしたので……」(文学部3年女子)

 東大医学部にまつわる、一つの伝説がある。

「実は医学部出身者の2割近くが『発達障害』だと言われているんです。実感としてはもっと多いかもしれません」(医学部4年)

 もちろん、明確なデータが存在するわけではない。しかし、東大OBでもある精神科医の吉田たかよし氏はこう断言する。

「東大に発達障害が多いというのは事実です」

 吉田氏は東大の本郷キャンパスの真ん前、本郷赤門前クリニックで発達障害に悩む受験生のカウンセリングを行う。氏は、相談に来た発達障害の学生に、東大受験を勧めている。理由は、東大生はお互いを尊重する傾向が強く、低レベルないじめは起きにくい、というのがひとつ。そしてもうひとつが、「東大の入試は、実は発達障害の生徒に向いているから」(吉田氏)だというから驚きである。

 なぜ発達障害の生徒に東大入試が向いているのか、それを記す前に発達障害についておさらいしておく。

 発達障害とは、落ち着きがなく、注意力に欠けるADHD(注意欠陥・多動性障害)や、コミュニケーション能力や社会性に難がある自閉症やアスペルガー症候群、あるいは読み書きが困難なLD(学習障害)などの総称だ。生まれつき、あるいは幼児期の段階において脳の発達が損なわれることで、前述のような様々な症状が現れる、脳機能障害である。

 '06年の厚労省の調査によれば、5歳児の8・2%~9・3%に発生し、近年では大人になって発達障害に気づく「大人の発達障害」が社会問題化している。特に有名なのがアスペルガー症候群だ。

「アスペルガー症候群の人たちは、集団の中で人に合わせることができません。相手の感情や、その場の雰囲気を読むことが不得手だからです。どの局面でも人に合わせる能力が問われる現代社会では、彼らは非常に生きにくい」(吉田氏)

IQが高いアスペルガー

 その一方で、アスペルガー症候群の人々には、IQが高い傾向がある。一般人のIQの正常値は85以上115未満と言われる。だがアスペルガー症候群の人々には、115以上のIQを示す人が少なくないのだ。

 本題に戻る。なぜ発達障害の人は東大に向いているのか。吉田氏が説明する。

「まず東大受験において最重要科目とされる数学。知能の高い発達障害の人は論理思考が得意な傾向があるので、数学を苦にしません。

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