それに2ちゃんねるが好きで、どんなに受験勉強が忙しくても、最低でも一日2時間は2ちゃんを見る、ということにしていて、センターや二次試験前日も欠かさず見ていました。それがいい精神安定剤になっていたんじゃないかな、と思います」
「趣味」を続ける余裕を持ちながら、軽々と理Ⅲに合格してしまったAさんは、少なくとも「受験勉強レベル」で見れば十分、天才の部類に入る人である。
一方で、理Ⅲ生にもう一つ多いのが、「根っからの勉強好き、競争好き」タイプの人間だ。西の名門、灘高校出身の理Ⅲ合格者Bさんは、勉強マニアと言っていいほどの勉強好きだった。
「一日の平均勉強時間は8時間くらいだったと思います。1月に入ってからは10時間以上やってました。勉強はやったらやった分点数が伸びるので、面白い。
ただ自分の中では中学受験のほうがよく勉強したような感覚ですね。小学4年生から希学園という塾に通っていて、夜遅くまで勉強していた記憶があります。6年になると、授業が23時頃まであって、帰って風呂に入って、寝るのはいつも24時過ぎでした。
灘中・高では、鉄緑会という塾に入って膨大な宿題をこなしました。6年間モチベーションを保つのは大変でしたが、高校に上がるときに、『高校から灘に入ってくる40人は学力が高いから、下から上がる奴らの順位は例年がくんと落ちる』という噂が流れてきたときは燃えました。やっぱり同じ面子で競っているよりは、新しい敵が来たほうが刺激になります」
今年の東大理Ⅲ合格者は、灘27名、開成8名。これに女子のトップ校・桜蔭高校の4名を加えれば39名に達する。年によってはこの3校だけで4割を超すこともある。開成の卒業生で東大医学部OBの作家・石井大地氏が語る。
「東大理Ⅲの最大の特徴は、都市圏の中高一貫校出身者が7~8割程度を占めるということです。他の学部では合格者の母数がもっと多いので、地方の県立トップ高校の学生の割合が高く、ここまで寡占状態になることはありません」
理Ⅲ合格者のインタビュー集『天才たちのメッセージ 東大理Ⅲ』の昨年版で行ったアンケートによれば、理Ⅲの出身高校割合は「私立」が88・7%と、圧倒的だった。
「こうした学校は、多くが男女別学です。別学の進学校というのは、どこも空気が似ていて、必然的に理Ⅲにはその別学進学校のムードが持ち込まれます。ですから大多数の理Ⅲ生にとって理Ⅲは、そのまま高校の延長線上にあり同じノリで生きられてしまうわけです」(石井氏)
中高の6年間、そして大学の6年間、あわせて12年間、同じような環境で生きることになる。裏を返せば、地方の公立校などで抜群に勉強ができる高校生でも、彼らと競って理Ⅲの入学テストを突破するのは、まさに至難の業ということになる。
ある開成卒の東大医学部生は、研修医として外の病院に出たときにはじめて「世界は灘と開成だけじゃないんだと悟った」という。つまり、理Ⅲおよび東大医学部とは、それほどに同質的で、閉鎖的な世界なのである。
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