住民訴訟に発展してしまったケースもある。長野県伊那市では'05年に操業を開始した「NECライティング」の工場が'10年に閉鎖された。それまでに市が支払った補助金は約1億5889万円。それに対して「解決金」1000万円が提示され、市議会が受け入れた。この決定に、住民が立ち上がったのだ。補助金の全額返還と損害賠償金請求を求めて訴訟を起こした住民代表の市川富士雄氏が言う。
「日本を代表する企業が、進出先で補助金をもらうだけもらって、さっさと撤退してしまう。そんな地元をバカにした話があるでしょうか。いらなくなった工場用地が荒れ果てたまま残り、費やした工事費用が市の負担として残る。こんな大企業の身勝手を許してはいけません」
NECライティングは、この件について、「現在裁判で審議中でもあり、コメントは控えさせて頂きたい」とする。
前出・黒崎教授が言う。
「地元はほとんど恩恵を受けないまま、企業が逃げ出したのですから、行政も結果責任を問われるべきです。地元への裏切り行為をしているわけですから」
企業誘致の失敗で税金が泡と消えたことを、自治体は理解できているのか。
「フライデー」2012年5月11・18日号より
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