桐光学園の怪物左腕・松井裕樹(3年)に“見えない力”が働くともっぱらだ。神奈川大会3、4回戦は登板せず。22日に5回戦を迎えるが、「ここから(ベスト16)は自分が全試合投げるつもり」と腕を撫している。
ドクターKの人気は凄まじい。登板した2回戦が行われた保土ケ谷球場では、早朝にもかかわらず、開門前に約500人のファンが長蛇の列をつくって大混乱。神奈川県高野連は予定を早めて開門し、外野席も開放した。
桐光学園の試合後には混乱を避けるため、松井だけ他の選手とは別の出口から“脱出”させるなど、高野連や関係者は対応に追われている。ある高校野球関係者が言う。
「これだけお客さんを呼べる松井を、高野連は是が非でも甲子園に行かせたいでしょう。大会の盛り上がりが全然違いますから。実際、センバツに出なかったことで、関係者の間では落胆の声も多かった。全体的な傾向だけど、スター選手がいると、特に予選では審判の判定が甘くなることがある。高野連ほか、みんなが甲子園に行って欲しいという重圧は、本人や学校だけじゃなく、審判にもかかってくるわけです。全国で最激戦区の神奈川は簡単には勝ち抜けませんから」
審判も人間だ。松井は落差の大きいスライダー、チェンジアップが武器。判定が難しい審判泣かせの投手でもある。
ストライクかボールか迷ったらストライク――。
大詰めを迎える神奈川大会で、これからはそんなシーンが増えるかもしれない。
(日刊ゲンダイ2013年7月22日掲載)