出資法違反:「温泉権」元社長逮捕へ 80億円集める
毎日新聞 2013年07月17日 07時46分(最終更新 07月17日 10時47分)
温泉を独占して使用できる「鉱泉権」の販売を名目に出資を募ったとして、警視庁と鹿児島県警の合同捜査本部は17日にも、健康食品会社「健康医学社」(東京都港区、破産)の元社長(65)と元取締役2人の計3人を出資法(預かり金の禁止)違反容疑で逮捕する方針を固めた。同社は1998年以降、「鉱泉権」や「温泉権」などの販売を名目に約650人から計約80億円を集めたとみられるが、2010年から配当が滞り、解約にも応じなくなっていたという。
捜査関係者によると元社長らは03年4月〜10年8月、鹿児島県霧島市の事務所敷地内の期限付き「鉱泉権」を1口約100万円で9人に約2億3000万円分販売。同社が温泉を使う「利用料」として年約5%の配当を約束した疑いが持たれている。
関係者によれば、同社は健康食品の「特許権」「小口営業権」などの名目でも出資を募っていた。いずれも1口100万円程度で年約5%の配当を約束。契約期間の終了後は「元本を返済する」と説明していたという。
民間信用調査会社によると、健康医学社は元社長の父親(故人)が1937年に創業した。主力商品は独自に開発した健康医療用具の「バンキー」。直径数センチ〜十数センチのガラス製のカップ(吸着具)を背中などに押し当てカップ内の空気を吸い出すことで血行を促すもので、「カッピング」と呼ばれる施術の一つ。全国の接骨院やエステサロンでも使われている。いち早く黒酢の製造販売に乗り出したことでも知られた。
温泉権などの名目で集めた出資金は、酒造会社を買収するなど事業拡大に転用されたとみられる。08年9月期には14億円を売り上げたが年々落ち込み、12年10月に破産した。
元社長は毎日新聞の取材に「主力製品の黒酢原液が300億円相当分残っており、きちんと返す」と話していた。【黒田阿紗子】