社説

原発汚染水の流出/東電任せはもはや危うい

 東京電力福島第1原発の地下の状況は、一体どうなっているのか。汚染物質が「制御不能」になっている可能性もあるのではないか。
 東電は22日、高濃度の放射性物質が原発敷地内から海に流れ出ていることを初めて認めた。それ自体、極めて重大な問題だが、東電のこれまでの対応は全くなっていない。
 原発の敷地内にある観測用井戸から2カ月前に高濃度の汚染水が見つかり、その後もずっと検出されていた。海に近い井戸の中の地下水から放射性物質が検出されれば当然、海への流出が疑われる。それでも東電は流出を否定した。
 今月になって、国の原子力規制委員会が高濃度の汚染水が地下に染み込み、「海に拡散していることが強く疑われる」と指摘しており、結局はその通りだったわけだ。
 外部から言われて追認する結果になってしまったのでは、当事者としての無能力ぶりを証明したに等しい。汚染水を海へ垂れ流すことは到底許されず、東電は当面、海への流出をくい止める対策に全力を注がなければならない。
 東電の対応能力の欠如はあきれるばかりだ。事故処理に東電が第一義的な責任を負わなければならないのは確かだが、国はもっと関与を強めて、作業を主体的に進める時期に差し掛かっているのではないか。
 東電によると、海への拡散を見抜けなかったのは社内の連絡体制の不備が原因だという。
 潮位や降雨によって観測用井戸の地下水の水位が変化していたが、そのことが「社内で共有されていなかった」と説明している。
 だが、さまざまな理由で水位が変わるのは当たり前であり、いちいち説明しなくとも分かるのではないか。何とも首をかしげたくなる話だ。
 福島第1原発には危険な放射性汚染水が少なくとも2種類ある。一つは海に近い作業用トンネルの中に、もう一つは原子炉建屋内にたまっている。
 このうち建屋内の汚染水は地下水の浸入によって1日に400トンも発生し続け、重大な不安材料になっている。
 汚染水が地下水などとともにいったん海に出て拡散したら回収は不可能であり、是が非でも流出させてはならない。東電は地中に特殊な物質を入れて土を固化し、海への流出を防ぐ計画だが、その効果は数年にとどまるという。
 環境汚染防止のためには、原発敷地内を通って海に続く地下水の流れを止める必要がある。陸側で地下水を抜いた上、「土の壁」で海と遮断する方策が考えられているが、地下水の影響を完全に排除することは相当に困難だろう。
 福島第1原発の廃炉作業はもはや、極めて緊急性が高い「国家プロジェクト」と位置付け本気で取り組むべきだ。一企業で担い切れないのは明白であり、早めに手を打たないと取り返しがつかなくなる危険性がある。

2013年07月24日水曜日

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