大津市で昨年(2011年)10月、中学2年生(当時13)がマンションから飛び降り自殺をした。学校や市の教育委員会はいじめがあったことは認めたものの、自殺との関係は断定できないと主張していたが、全校生徒約860人へのアンケートで「(自殺した生徒は)自殺の練習をさせられていた」と回答した生徒が16人いた事実を伏せていたことがわかった。これまでもたびたび指摘されてきた教育委員会の隠蔽体質がまたしても問題になっている。
学校は自殺直後の昨年10月の記者会見で「うちの方として原因は見当たらない」と述べていたが、翌月、その後に行ったアンケートでいじめがあったことを認めた。しかし、アンケートに「いじめの練習をさせられていた」という回答があったことは発表しなかった。教育委員会は「回答がいずれも伝聞で、事実と確認できなかったため」として、「いじめと自殺の因果関係については判断できない」としている。男子生徒の両親はいじめた生徒や大津市などを相手に、「悪質ないじめが自殺につながった」と約7720万円の損害賠償を求めて提訴している。
教育評論家の尾木直樹は「自殺といじめの因果関係は95%あると思います」としたうえで、その背景として学校や教育委員会の隠蔽体質を指摘する。「学校評価制度が入ってきて、学校にいじめがあるといっただけで校長の評価が下がる。自殺といじめの因果関係は難しいが、それを判断するのは専門のドクターや裁判官。ズブの素人の教育委員会がなかったと言い張ること自体が異常だと思います」
これについて弁護士の田中喜代重は、「まず、どんないじめがあったのか、それが自殺に結びついたのかの認定が非常に難しい。因果関係があったとしても、学校が予見・防止できたどうかが次のハードルになる。このため、こういった民事訴訟では8割ぐらいが敗訴してしまう。しかし、最近は裁判所も予見可能性は必要ない、学校はいじめがあってはいけないところなので、いじめがあったこと自体に過失がある、それさえあれば死亡に責任を負うんだというようなことを言っている」と解説する。
責任を認めたくない側が、都合の悪いことを隠したがるのはよくあることとはいえ、子どもを教育する立場の人たちがそのことをあからさまに行うことに遺族や関係者は深い憤りを覚えるのだ。
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