茫然(ぼうぜん)自失の体である。参院選に敗れ、自民党1強体制下に甘んじた野党の姿だ。当選者が改選議席の半分を大きく割り込んだ民主党だが、海江田代表は「改革は道半ばだ」と[記事全文]
緩やかに回復してきた世界経済が正念場を迎えている。米国が金融政策で量的緩和を縮小するとの観測が強まり、これまで新興国に流れ込んでいた先進国マネーが、逆に引き揚げられる動[記事全文]
茫然(ぼうぜん)自失の体である。参院選に敗れ、自民党1強体制下に甘んじた野党の姿だ。
当選者が改選議席の半分を大きく割り込んだ民主党だが、海江田代表は「改革は道半ばだ」として続投する意向だ。意地悪い言い方をすれば、代表を交代させるエネルギーすら党内に残っていないということだろう。
それでも、野党がいつまでも「多弱」のままでいいはずはない。自民党にとって代わり得る手ごわい野党がなければ、議会制民主主義は健全に機能しないからだ。
ここは振り出しに戻ったつもりでやり直すしかない。
自民党が圧勝した去年の衆院選の投票率は59・32%、おとといの参院選は52・61%だった。前者は戦後最低、後者は戦後3番目に低い。
つまり、1強体制をつくり上げた選択の機会に、4割から5割近い有権者は参加していないのだ。棄権した人たちの考えは一様でないにせよ、1強ではすくいきれない民意があることは間違いない。
96年の結党以来、民主党は自民党政治に飽き足りない有権者の支持を集め、政権奪取を果たした。ところが、今回の参院選での出口調査を見ると、無党派層がそっぽを向いてしまったことが分かる。
政権担当時の失策にノーを突きつけられての下野。その後も参院での首相問責決議をめぐる迷走や、東京選挙区での公認問題をめぐる細野幹事長と菅元首相との確執など不手際を繰り返した。支持が離れるのも無理はない。
党再生の即効薬はないが、民主党には教訓とすべき3年あまりの政権党の経験がある。
かつて政権で活躍した落選議員の力も借り、「1強」がすくえない民意を受け止め、政策として練り上げることに全力を挙げるべきだ。
日本維新の会の橋下徹・大阪市長は「次の衆院選までに野党がまとまらないと、国のためにならない」と語っている。
野党がバラバラでは与党を利するだけだ。一致できる分野で共同で自民党への対案を打ち出す。政権が暴走したらスクラムを組んで阻止する。その積み上げの中で、有権者の支持を地道に取り戻していくほかはない。
政権が直面する難題と、政権交代が起きやすい衆院の選挙制度を考えれば、1強体制は永久に続くわけではない。野党議員には、惨敗に沈んでいる暇はないはずだ。
与党議員の2倍は働く気概で安倍政権に挑んでほしい。
緩やかに回復してきた世界経済が正念場を迎えている。
米国が金融政策で量的緩和を縮小するとの観測が強まり、これまで新興国に流れ込んでいた先進国マネーが、逆に引き揚げられる動きが加速してきた。
それでなくとも最近の新興国の景気は減速していた。急激な金融の変化は、その変調に拍車をかけかねない。
モスクワで開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、先進国の金融政策について慎重な調整と意思疎通をするよう申しあわせた。
そもそも新興国が成長力を取り戻すには国内改革が欠かせない。先進国はその実現を促すためにも何をすべきか。G20は新たな難題に直面している。
ここ近年、新興国の成長率は明らかに鈍化した。ブラジルは昨年1%を割り、インドもピークの半分に落ちた。中国は「影の銀行」など金融不安も浮上。対中輸出が減った東南アジアの景気にも影をおとしている。
そうした変調は、不況にある欧州向け輸出の減少など外的要因もあるが、各国に長期にわたる高成長のひずみや矛盾がたまった結果という面が大きい。
中国では輸出と投資頼みが限界に達し、インドでは交通や電力網などの整備の遅れがインフレを悪化させている。ブラジルでは中間層の消費は旺盛だが、投資が足りない。
相互貿易の拡大など、これまで新興諸国を台頭させてきた相乗効果のメカニズムが、縮小方向に逆転すると、対応はさらにむずかしくなる。
その事態を一層こじらせかねないのが米国の緩和マネーの逆流だ。お金の流出と通貨の下落の悪循環を防ぐために市場介入する新興国も増えている。
米国の金融政策が自国の景気を最優先するのは当然だが、中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、投機筋などの思惑が先走らないよう市場にクギを刺し続けねばならない。
新興国は改革待ったなしだ。中国は銀行貸し出しの金利規制を一部やめる。国有企業を優遇し、成長できる民間企業にお金が回らない矛盾を和らげる一歩だ。インドは通信や保険などへの外資規制を緩めるという。
改革は手つかずだった難題が多く、景気に逆行する可能性もある。だが、改革の進展に応じて先進国からの直接投資が広がる好循環が生まれれば、世界経済の安定につながる。
地球全体を見すえ、先進国と新興国の新たな相互依存関係をどう描くか。その道筋を探ることにG20の役割がある。