特集ワイド:参院選 今だから、安倍首相にあえて一言 大勝後の政権は、もろい
毎日新聞 2013年07月22日 東京夕刊
では、1982〜87年、戦後4番目の長期政権を実現した中曽根康弘元首相(95)なら、どんな忠告をするだろうか。
「今回の参院選では、野党が弱すぎて争点が浮き彫りにならなかった。衆参のねじれが解消され、安倍政権は安定飛行期に入ったと言える。だが私の経験からするとこうした時こそ危機を招きやすい。閣僚や党要人が不用意な発言をしないよう大いに注意すべきです。心を引き締め、細心の注意を払うことで長期政権の可能性が生まれてきます」
自身も86年の衆参同日選で大勝した元首相の言葉にはすごみがある。長期政権中には「戦後政治の総決算」を掲げ、国鉄の分割民営化を実現した。日米同盟の強化や防衛費の「国民総生産(GNP)1%枠」の撤廃などを次々と進めた。
安定飛行から長期政権へ移行するポイントは何か。「問題は国民に飽きを感じさせないようにすることです。それには日々鮮度を高めた発想と、それを生む努力が欠かせない。自民党を中心とした保守路線の鮮度は落ちつつある。そろそろ未来性のある新しい保守主義を開拓すべき時期にきている」と注文した。
中曽根元首相といえば首脳外交を積極的に展開したことで知られる。気になるのはやはり外交政策だ。「安倍首相はこれまで旧来の外交路線を志向してきた。だが国際関係、さらには日本の将来、世界平和のためにも、新しい視野に立つ、民間の英知をも結集させた幅広い『新志向外交』を推進してほしい」
国民の生活がかかっているだけに健闘を祈りたい。
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