特集ワイド:参院選 今だから、安倍首相にあえて一言 大勝後の政権は、もろい
毎日新聞 2013年07月22日 東京夕刊
首相の座を放り出したあの日から約6年、安倍晋三首相が率いる与党・自民党が参院選で大勝した。長期政権への道を歩み始めたとも言われる安倍首相。勝利の余韻消えぬ今、あえて贈るべき言葉を探ってみた。【松田喬和、吉井理記】
◇「いいね!」に一喜一憂なんてダメ/靖国参拝は慎重に対処すべきだ/反知性の「ヤンキー」から脱却を
21日夜、東京・永田町の自民党本部。候補者名が書かれたボードは我が世の春とばかりバラが咲き誇る。午後10時前から約1時間半、安倍首相はメディア取材に時に笑いながら応じたが、大勝の重圧なのか、カメラに映らないところでは唇を結び、組んだ両手の指をせわしく動かす。石破茂幹事長と笑顔を交わし合うのもバラをつける時ぐらい。意外にもはしゃぐ姿は見られなかった。
「クールになりましたね。人の話をよく聞くやさしい人ですから、昔は情に流され判断を誤る場面があった。今は菅義偉官房長官の支えもあり、冷静に課題や人事をさばいている」。2007年の首相辞任当時と現在を比べて、そう評するのは元テレビ朝日政治部長で政治ジャーナリスト、末延吉正さん(58)。第1次安倍内閣では有識者会議委員に招かれ、プライベートでの親交も深い。首相辞任直後、月刊誌に安倍さんが閣内の不協和音や相次ぐ失言に苦しむ姿を描き話題を呼んだ。
だが、大勝については「逆に心配です。ライバルなき政権は案外もろい。内部から緩みが出てくるからです。3年3カ月、下野していた自民党が本当に反省しているか。そんなにしていないですよ、絶対。参院選で勝って衆参のねじれを解消するのが、自民党のこれまでの最大の目標でした。選挙が終わったとたん旧来の派閥重視・利益誘導型の人が好き勝手を言い始めるでしょうし、幹部の失言も心配です。そのコントロールに失敗すれば、支持率に響く」
高支持率は、得意のフェイスブックなどを利用したメディア戦略が奏功したとの見方がある。「秋の臨時国会が政権のヤマ場です。一国の総理が批判や支持率を気にしてフェイスブックに書き込みを繰り返し『いいね!』に一喜一憂するようなメディア戦略に気を取られてはダメ。腰をすえ政策優先で進むべきです。消費増税や社会保障、外交など課題だらけですから」と力を込める。末延さんはフェイスブックやツイッターはしない。「書き込みに追われ、じっくりモノを考えられなくなるから」という。