東京電力福島第一原発の海近くの観測井戸から高濃度の放射性物質が検出されている問題で、東電は22日、汚染された地下水が海に流出しているとみられると発表した。さらに東電は坑道にたまった汚染水が今も地中に漏れ続けている可能性があるとみている。
今回の問題で、海への流出を東電が認めたのは初めて。東電は、原発の港湾外の海水に放射性物質の濃度の変動がほぼないことから、汚染は港湾内にとどまるとの見方を示している。しかし、東電が地元漁協などへの理解を得た上で、原発に流れ込む前に地下水をくみ上げて海に放出する計画は実現がさらに難しくなりそうだ。
港湾内で採取した海水からトリチウム(三重水素)が検出されている。日によって値は変動するが、今月3日に1リットルあたり2300ベクレルを検出。4月の20倍に上昇した。さらに井戸の水位が潮位の変動で上下しており、東電によると、放射性物質に汚染された地下水が港湾内の海水と混じり合っているとみられるという。
また、東電は井戸水から検出された放射性物質が事故直後に漏れ出た汚染水によるものだけでなく、地下の坑道にたまっている1万トン余りの汚染水が現在も地中に漏れ出て汚染された可能性もあると判断した。
東電原子力・立地本部の尾野昌之本部長代理は「汚染物質を外に出さない努力をしてきた。今回の状況を重く受け止めている。大変ご心配をかけて申し訳ない」と謝罪した。
今年5月に採取した井戸の水で汚染が発覚。当初、東電は事故直後に海洋流出した高濃度の汚染水が地中にしみ込んだものと推定。海への流出は「判断できない」としてきた。一方、原子力規制委員会は今月10日、汚染水の海への拡散が強く疑われると指摘していた。