山口5人殺害:不気味な張り紙残して男不明、住民不安な夜
毎日新聞 2013年07月22日 21時34分(最終更新 07月23日 01時58分)
わずか12世帯の山あいの集落で、5人のお年寄りが無残な姿で見つかった。山口県周南市金峰(みたけ)で起きた連続殺人放火事件。全焼した民家の隣家には「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」と書かれた不気味な張り紙が残され、家主の男(63)は姿を消している。山口県警は安全のため、住民に市の施設に避難するよう呼びかけ住民たちは不安な夜を過ごした。【蒲原明佳、杉山雄飛、尾垣和幸】
「空まで真っ赤だった」。21日夜、2棟の民家が全焼した火災のすさまじさを、近所の男性(68)は振り返った。消防隊の放水をものともしない火勢。別の男性(82)は「まさに火の海だった」と話す。消火活動から約2時間後も煙が上がり、2棟の焼け跡からは3人が遺体で見つかった。
その火災から一夜明けた22日、今度は別々の民家で男女の遺体が見つかった。深い山林に囲まれた細い道沿いに木造平屋の古い民家が点在する集落の住民は、不可解な事件に揺れた。
山口県警が重要参考人として追っている男は近所付き合いがほとんどなく、孤立した状態だったという。
住民によると、男は金峰地区出身。仕事で川崎市に一時住んでいたが、10〜15年ほど前に戻ってきた。同居していた父親が7〜8年前に亡くなり、その後は1人暮らし。身長約180センチで左官業を営み、犬を2匹飼っていたという。近くの男性(57)は「犬の散歩をよくしており、会えば愛想良くあいさつをしてくれた」と話す。
一方で、気性が荒い男の一面を語る住民もいる。集落の自治会活動には一切参加せず、回覧板を持っていくと「ゴミになるからいらん」と受け取りを拒否。犬のふんを片付けるよう注意されると「血が見たいのか」とすごんだり「薬を飲んでいるから10人や20人殺しても罪にならん」と暴言を吐くこともあったという。住民の多くは男を避け、県警周南署に相談したこともあったという。
県警が住民の安全を考えて避難先にした市金峰杣の里交流館周辺は、県警が規制線を張った。ものものしい雰囲気の中、時折住民が出入りした。