バルサルタン:臨床試験疑惑 降圧剤不正「意図的操作」明言避け 大学側会見、元社員は聴取拒む

2013年07月12日

 日本で最も売れている医療用医薬品である降圧剤「バルサルタン」を巡る臨床試験疑惑は11日、京都府立医大が初めて不正を認めたことで新たな局面に入った。データ操作は、誰が何のために行ったのか。販売元のノバルティスファーマ(東京)の社員(既に退職)はどう関与したのか。当の元社員は大学の聴取を拒んでおり、疑惑は深まるばかりだ。

 「今回の事態を招いたことを極めて重く受け止め、心からおわびします。関与した者の厳正な処分を行いたい」。この日、京都市内の京都府立医大で行われた記者会見で、吉川敏一学長は深々と頭を下げて陳謝した。

 報告書では、統計解析を担当した元社員や、研究を主導した松原弘明元教授(56)を含む複数の人物がデータ操作に関わることが可能だったとした。しかし、調査委員長の伏木信次副学長は「意図的な操作かどうかも含めて特定することはできなかった」と、明言を避け続けた。

 大学の問題点として「研究室には統計解析に通じた人材がおらず、製薬企業従業員の力を期待した点に問題があった」と指摘した。再発防止策として、統計の専門家を学内に配置するほか、製薬企業からの研究費の寄付や研究者の講演料の受け取り状況についてもホームページで公開するとした。薬を日常的に利用する患者などからの問い合わせに応じるため、近く大学病院内に専用相談窓口を設ける。

 厚生労働省研究開発振興課は「極めて遺憾な事態だ。具体的な責任は誰にあるのか、大学には引き続き調査を求める」(一瀬篤課長)とし、文部科学省と再発防止対策を協議する方針を示した。

 日本医学会の利益相反委員長、曽根三郎氏は「操作によって効果があったというのは捏造と言われても仕方がない。操作された結果を基に販売促進に利用したことは極めて悪質であり、再発防止のためにも企業は大学の調査に協力し、説明責任を果たすべきだ」と指摘する。【八田浩輔、野田武、五十嵐和大】

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 ■解説

 ◇大学の任意調査、限界

 バルサルタンは昨年度、日本で最も売れた医療用医薬品で、1083億円を売り上げた。これは保険料として国民が負担してきたのに、売り上げを支えた論文の正当性は失われた。ノバルティスファーマには説明責任が求められる。

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