社説:衆参ねじれ解消 熱なき圧勝におごるな
毎日新聞 2013年07月22日 03時46分
一方、野党の状況は深刻だ。民主党は惨敗を喫し、1998年の結党以来、最低の獲得議席に落ち込んだ。安倍内閣に明確な対立軸を提示できず、発信力を著しく欠いた海江田万里代表の責任は大きい。
今や党の存在意義すら問われる。小選挙区制の下で2大政党化や政権交代を実現しながら政権運営に失敗し、党の目標を見失ったままだ。税と社会保障をめぐる自公民3党合意を進めた具体案の提示やエネルギー政策の肉付けを怠り、アベノミクスもあいまいな「副作用」批判でかわしているようでは有権者の目に「第2自民党」にしか映るまい。
◇存在意義問われる民主
今回、安倍内閣への対決姿勢が鮮明な共産党が健闘した。野党第1党の民主党が有権者から忌避され政策論争を提起できず、政治から活力を奪っている責任を自覚すべきだ。
日本維新の会やみんなの党など第三極勢が旋風を起こせなかったのも自民党の補完勢力ではないかという印象をぬぐえなかったためだろう。巨大与党に是々非々路線を貫くことは困難だ。野党としての立ち位置を明確にできるかが問われよう。
非自民を売り物に野党が政権交代をアピールできる時代はすでに終わっている。安倍内閣へ対立軸を示し、政権の受け皿をじっくりと構築すべきだ。その能力すら欠くようでは野党勢の再編も免れまい。
今参院選で自民、維新、みんななど改憲派の非改選と合わせた合計議席は改憲の発議に必要な参院の3分の2以上に至らなかった。とはいえ、「加憲」を主張する公明党の動向次第では憲法をめぐる議論は今後の政治の行方をなお左右し得る。
首相は選挙戦終盤に憲法9条改正への意欲を示したが、改憲の具体的内容や優先順位まで国民に説明しての審判だったとは到底言えまい。改憲手続きを定める96条改正も含め、性急な議論は禁物である。
ねじれ状態が解消しても衆参両院の役割があいまいな構造は温存されている。参院のあり方など統治機構の将来像を優先して議論することを改めて求めたい。
与党の節度と、政策を軸にした野党の連携という車の両輪が回らなければ政治は緊張感を失う。まかり間違ってもかつて政権を独占した「55年体制」時代の復活などと、自民党は勘違いをしないことだ。政党の真価がかつてなく問われる局面であると心得てほしい。