第23回の参院通常選挙は21日、投開票の結果、自公両党で過半数を確保、衆参のねじれが解消した。昨年12月の衆院選につづく自民党の大勝により安倍晋三内閣は安定政権へのきっかけをつかんだ。
1989年の参院選で自民党が惨敗して衆参ねじれ状態となり、93年の衆院選での敗北で長期単独政権の55年体制が崩れてから、ちょうど20年。連立政権の時代となって政権交代も経験した日本政治は、また新しい段階に入った。
■「古い自民」に歯止めを
ただ投票率が前回2010年(57.92%)より大幅に低下した。ネット選挙の解禁による投票率の押し上げ効果も弱かったようだ。
投票率が低調だったのは、与党が設定した争点の前で野党は埋没してしまい、選挙戦の行方が早くから見えてしまったためだ。
衆参ねじれの解消を目標にかかげた自民党の選挙戦略は、安倍内閣の半年余について、その経済政策であるアベノミクスへの評価に絞り込むことだった。
資産がある有権者にとっては、内閣発足時からだけでも日経平均株価が4割も上昇し、プラスの「業績評価投票」となった。資産のない有権者は、アベノミクスで景気回復への期待が高まり、所得増への「将来期待投票」となった。
憲法改正や外交、エネルギーなど、イデオロギー色の強い争点は後ろに引っ込めて、経済の一点に集中させたことが功を奏した。
対する野党は、戦略・戦術で失敗した。昨年末の衆院選で民意が離れた民主党は、失った有権者の信頼を取り戻すことができないまま、安倍政権への政策的な対立軸も示せなかった。日本維新の会、みんなの党も含めた野党各党がバラバラで、非自民の受け皿を作れなかったのも響いた。
民主党はとりわけ深刻だ。議席数が半分以下に激減しただけでなく、98年の結党以来、最低の獲得議席となった。自民党に対峙していこうとすれば、政党としての立ち位置をしっかり定めなければならない。
安全保障や経済政策での維新やみんなの立地状況も考えると、保守で競争志向には位置できず、中道リベラルで再分配志向の政党としての路線をはっきりさせるしかないだろう。今後、党を割って出直すぐらいの覚悟で臨まないと、もはや民主党に明日はない。
自民党は選挙大勝によって浮かれることのないよう求めたい。懸念されるのが古い体質の復活である。既得権益の保護・分配への志向・偏狭なナショナリズムの3つのバネが働く可能性があるためだ。とくに規制改革にブレーキをかけ、公共事業の増額にアクセルを踏み込む動きには要注意だ。
昨年末の衆院選と今回の参院選で誕生した新人議員が多数派を占め、派閥のタガがゆるんでいる中で、派閥単位の党のガバナンス(統治)に代わる新たな型はできていない。政策決定では右肩上がりを前提に利益の分配を進めてきた自民党だが、今や必要なのは「負担の分配」のための調整システムである。
第2次安倍内閣は、参院選をへて安定政権への道筋を切りひらく環境が整った。首相の党総裁任期は15年9月までで、もし3年後の16年夏の次の参院選まで国政選挙がないとすれば、この3年が日本政治にとっては課題処理の絶好のチャンスだ。
■カギ握る成長戦略実行
まず求められるのは経済再生をやりとげることだ。農業や医療などの岩盤規制を打ち破り、環太平洋経済連携協定(TPP)反対派も説得して、効果的な成長戦略を実行していくのは今しかない。第4の矢ともいわれる財政規律のために社会保障を中心とする歳出カットも進めていかねばならない。
将来期待で票を投じた有権者は、かりに所得が増えないとなれば、失望という名の電車に乗りかえて、あっという間に安倍内閣から去っていくだろう。そうならないようにするためにも、アベノミクスの成功に、すべての政治資源を集中させるべきだ。
現行憲法に問題があり、改憲の必要性があるのはその通りだ。ただ国力の回復が何よりも求められる現在、優先させるべきテーマは経済再生である。改憲論議は同時並行で進め、急ぐものは立法改革で対応すればいい。
経済力を高め国の安全保障を確かなものにするためにも、中国、韓国との関係修復は差しせまった課題だ。選挙が終わったのを機に局面打開への動きを促したい。
今回の選挙が、政治と経済の失われた20年と決別し新生日本づくりの転機となることを望みたい。
安倍晋三、自民党
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