2013.7.22 05:00

【甘口辛口】いまや完全にお遊び…球宴のあり方を真剣に議論すべき

■7月22日

 1球目は笑えたが、2球続けて、しかも「あわや乱闘」の寸劇はいくらお祭りのオールスター戦でも違和感を覚えた人も多かったろう。20日の第2戦。全セの阪神・藤浪が全パの4番、日本ハム・中田に対して投じた山なりの超スローボール。2球目は背中を通り、怒った中田がバットを捨てて…という筋書きだった。

 ルーキーの藤浪ひとりでできる芸当でもなく、1球目は中田と全セの阪神・西岡という大阪桐蔭の先輩たちと考えたという。2球目は「1球だけではつまらない」と考えた全セの捕手・谷繁(中日)のサインとか。藤浪に詰め寄る?中田を谷繁が止めに行くなど、大した演技力ではある。

 相撲なら“がちんこ勝負”のつもりで見に行った本場所で初っ切りを見せられたようなものだが、誰もフシギに思わず、選手は「ファンが喜んだからいいじゃないか」と思ったろう。かつてのオールスター戦は大先輩には近寄り難い厳しい雰囲気があったと聞くが、いまはみんな“お友達”のような感覚で接しているらしい。

 96年のオールスター第2戦で全パの仰木監督が当時巨人の松井を打席に迎え、外野手のオリックス・イチローをマウンドに送った。しかし、全セの野村監督は憤然と松井を引っ込め代打に投手の高津を指名した。このあたりまでは「オールスターはお遊びじゃない」の雰囲気があったが、いまや完全にお遊びの感がある。

 誇りやステータスの高さを1試合に凝結した大リーグのそれに比べ、3試合だらだらと消化するだけに見える。選手会もコミッショナーに不信任を突きつけるのもいいが、どうすればオールスター戦の格が保てるか、真剣に議論すべきではないか。(今村忠)

(紙面から)