まだまだ「α版」の「ネット選挙」

2013/07/22


選挙が終わりましたね。ネット選挙云々について書いてみます。


影響は軽微

詳しいデータは出ていない状態で断言するのもアレですが、肌感覚と経験的に、ネット選挙の影響力は軽微と考えられるでしょう。

今回の「ネット選挙」なるものの実態は、「政治家がツイッター、フェイスブック、ブログ、Ustreamなどを活用して情報発信をした」という程度のものです。

そうです、その程度なんです。わざわざそんな情報を見に行くのは、政治に関して熱心かつITリテラシーがそこそこに高い人たちに限られます。そりゃ影響は軽微なはずです。うちの嫁はそこそこ政治に関心がある人間ですが、ネットをあまり見ないないので(ニュースくらいしか見ません)、候補者が発信する情報には「まったく」触れていませんでした。


戦略が不在

ではネット選挙に可能性がないのかというと、決してそんなことはありません。今回の選挙においては、いずれの候補者にも、ほとんど戦略らしい戦略が欠けていたとぼくは見ています。

今回の「ネット選挙」は、ざっくりまとめれば「フェイスブックページ作りました」という程度の話であり、運用に関してもボランティアベースで、予算はゼロというのがほとんどでしょう。戦略策定というプロセス自体がなかったのではないでしょうか。


無論、ネット選挙というのは「政治家がツイッター、フェイスブック、ブログ、Ustreamなどを活用して情報発信をする」というレベルに留まる話ではありません。

たとえば

・オバマ大統領のように、支援者向けの独自オンラインコミュニティをつくってみる
・外部ライターなどを巻き込み、政治家ブログを積極的にメディア化していく
・よく管理されたコミュニティで、有権者との双方向の議論を実践していく
・LINEを活用する
・(グレーなのは承知ですが)与沢翼氏よろしく、アフィリエイト的なメール攻勢を仕掛ける

なんて戦術が考えられるでしょう。ビッグデータ関連でも色々とできそう。

「ネット選挙は無料でできる」みたいな論調がありますが、ぼくは基本的に反対です。無料でもできますが、それをやるには圧倒的なリーダーシップとボランティアマネジメント能力が必要です。本気で戦略的にやるためには、ある程度の予算が掛かると思っておくべきでしょう。

加熱する「ネット選挙ビジネス」。「ツイッターはお金は掛からない」って誰が言った?


今回は、実質「最初の」ネット選挙でした。今後は戦略から入る候補も増加するはずですから、「ネット選挙」が社会に与える影響は増大していくと予想します。ハードウェア、ソフトウェアの面でもインフラは改善していきますしね。まだまだネット選挙は「α版」レベルです。

もちろんネット選挙戦略は、選挙期間に限らず、普段の政治活動においてこそ実践すべき話です。特にコミュニティ運営に関しては、短い期間で成果が出るわけがありませんから。その意味では、今回落選した候補者は、今から次回の選挙に向けてネット戦略を練って、施策を実践し始めるべきです。


誹謗中傷などの問題について

ネット選挙解禁にあたっては、なりすましや誹謗中傷などの問題点が指摘されていました。いざ蓋を開けてみると、それほど大きな問題になっていなかったようにも思えます。

まぁ、「なりすまし」に関しては法的に厳しい罰則が規定されていますし、各種プラットフォームも迅速に対応しているようですし、そもそも問題にはなりにくいでしょう。

ただし、ネット上の誹謗中傷に関しては、何らかの改善が必要だと考えます。例によって特定候補者に向けて、「落ちろ」「バカ」「死ね」といった罵詈雑言を飛ばしているアカウントも散見されました。報道されていないだけで、ネット上の悪意に対してうんざりする気分に陥った候補は少なくないでしょう。

「ネットはそういうものだ」という諦めもわかりますが、それではいつまでも「ネットはそういうもの」になってしまいます。端的にいえば、「罵詈雑言が飛ばない、かつ政治的な偏りも少ない、質の高いネット言論空間」の存在が必要です。もっとも、どういったかたちでそれを実装していくかは、ぼくにもわかりませんが…これからの民間の取り組みに期待です。


公選法の改正も視野に?

今回の選挙においては、「未成年はRTしてはいけない」といった、ネット的な常識からは強い違和感がある各種規制が露呈されました。「投開票日当日は候補者を応援するツイートをしてはいけない」なんてのも、知らずに違反する人が多そうな規制です。

ネット選挙戦略自体が進化していくに連れ、こうした問題はさらに露呈していくでしょう。ネットが進化していくスピードに、公選法が追いついていかないのです。

これはある種、パンドラの箱のようなものですから、今後はネット的な実情に合わせて公選法をアップデートしていくという流れになるのでしょう。西田亮介さんも指摘していますが、ネット選挙の本質は、この価値観の問題にこそあるのでしょう。

ネット選挙の可否をめぐる議論において意識されることはあまりないが、問われているのは、日本の選挙をこのようなインターネット的価値観に賭けることができるか否かなのだ。ネット選挙の本質は「価値観の選択」にある。


ざっくり言えば、ネット選挙なるものは、まだまだ「α版」だということです。今後、戦略面で進化していくことは間違いないですし、公選法をはじめとするルールもネットの実情に合わせて緩やかに変化していくのでしょう。


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