トップページ社会ニュース一覧芥川賞 直木賞の受賞作決まる
ニュース詳細

芥川賞 直木賞の受賞作決まる
7月17日 22時15分

芥川賞 直木賞の受賞作決まる
K10031057511_1307172152_1307172155.mp4

第149回の芥川賞と直木賞の選考会が17日夜、東京で開かれ、芥川賞に藤野可織さんの「爪と目」が、直木賞に桜木紫乃さんの連作短編集「ホテルローヤル」がそれぞれ選ばれました。

芥川賞に藤野可織さん

このうち、芥川賞の受賞が決まった藤野可織さんは京都市出身の33歳。
同志社大学の大学院を修了後、平成18年に「いやしい鳥」で文芸雑誌の新人賞を受賞してデビューしました。
今回、芥川賞は2度目の候補で受賞となりました。
受賞作の「爪と目」は、不倫の末に、男性の連れ子の娘と一緒に3人で暮らすことなった若い女性について描いた作品です。
女性と連れ子の複雑でいびつな関係が、連れ子の視点から繊細に描かれています。
藤野さんは記者会見で、「大変うれしく思っています。こんな夢のような、いいことがあるんやな」と京都市出身の藤野さんらしい表現で喜びを語りました。
そのうえで、「これからは毎回一作一作、できるだけ前作とは違ういろんな小説を書いていきたい」と抱負を述べました。

選考委員・島田さん「極めて精巧」

芥川賞の受賞が決まった藤野さんの作品の受賞理由について、選考委員の島田雅彦さんは、「作品は『あなたへ』で始まる2人称小説だ。2人称小説の形式は過去に例がないわけではないが、成功例が少ないなかでこの作品は非常に2人称が功を奏していた。連れ子の3歳児のまなざしで父の愛人である『あなた』のことを描きながらも、その『あなた』に自画像を重ね合わせるという強烈な自己批評が含まれている。細部があいまいにされており、謎が多い小説ではあるが、じっくり読むと極めて精巧にできており、藤野さんのこれまでの作品で最もよかった」と話していました。
一方、東日本大震災をテーマに取り上げ、話題の候補作となっていたいとうせいこうさんの作品については、「まだ震災からの歳月が浅く、311を直接素材にして描くのをためらう作家が多いなかで、あえて死者を利用して書いたというそしりを恐れずに、この手の作品を書いた『蛮勇』に対する評価はある。一方で、技巧を極めすぎたあざとさがあり、また死者の弔いについてヒューマニズムですべてを回収してしまっていいのかと思った」と受賞に至らなかった理由を語りました。

直木賞に桜木紫乃さん

直木賞の受賞が決まった桜木紫乃さんは北海道釧路市出身の48歳。
高校を卒業して勤務した裁判所を結婚を機に退職し、30歳を過ぎて執筆活動を始めて、平成14年に「雪虫」でデビューしました。
桜木さんは、生まれ育った北海道を舞台に男女の情愛を描いた作品が多く、直木賞は2度目の候補で受賞となりました。
受賞作の「ホテルローヤル」は、北国のうら寂しいラブホテルを舞台にした7つの短編小説からなる作品です。
ホテルが出来たときから廃虚になるまで一話ごとに時間をさかのぼりながら、この場所を行き交ったさまざまな事情を抱える男女の人間模様を丁寧に描いています。
桜木さんは記者会見で、「書くことをやめなくてよかったと思います。きっと私にしか書けない1行があると考えて書きました」と心境を語りました。
そのうえで、ラブホテルを舞台にした今回の作品について、「実家がラブホテルでその名前が作品のタイトルと同じ『ホテルローヤル』で、いつかここを舞台に書きたいと思っていました。ホテルで10代から本当にいろんな人を見てきて、実家で掃除をしたり親の手伝いをしたりして、あの時間が財産だったんだなと思うことができます。ホテル屋の娘に生まれてよかったです」と話していました。

選考委員・阿刀田さん「本当に見事」

直木賞の受賞が決まった桜木さんの作品ついて、選考委員の阿刀田高さんは、「ラブホテルを舞台に喜びや悲しみ、どうしようもない生きざまが表現された7つの短編が、趣向を変えながらホテルに集約されるストーリーを作っているのは、本当に見事で直木賞は当然だ。小説ではどうしようもない世界で何とか希望を見いだそうとしている人たちが描かれ、実際は日本人の多くの人たちはこうしたことに喜びを感じてあしたを頑張ろうとしていることをこれだけ痛切に感じさせる小説は珍しい」と受賞作に選んだ理由を語りました。

[関連ニュース]
k10013105751000.html

[関連ニュース]

  自動検索

直木賞に桜木紫乃さん (7月17日 19時14分)

芥川賞に藤野可織さん (7月17日 19時4分)

このページの先頭へ