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同和行政監視メールマガジンvol.66
[発行:寺園敦史★2001年6月8日]
■今号のもくじ
◎半年で逮捕者3人――まだまだいたジャンキー公務員
◎同和対策で大量の不適格者を雇用してきたことを認める京都市
◎半年で逮捕者3人――まだまだいたジャンキー公務員
1997〜98年にかけて,京都市職員による覚せい剤使用事件が相次いで起こったのは,京都市民ならおそらくまだ記憶に新しいことだろう。文字通り連日のように,桝本市長や総務局長,環境局(旧清掃局)長らのお詫びコメントが新聞に載った。
幸いなことに,それ以降,市職員が覚せい剤で捕まったというニュースは聞かれなくなった。大量に逮捕者を出したのだから,覚せい剤を使う問題職員はあらかた一掃されたのかなと思っていたが,どうやらそうでもないらしい。
わたしが公文書公開条例にもとづいて請求していた京都市総務局人事部がまとめた懲戒処分の一覧表(1996〜2000年度分)が,6月7日,公開された。それによると,99年度こそ覚せい剤事件による処分者はいなかったが(ただし,コカイン使用による懲戒免職1件あり),2000年度だけで2人出している。いずれも環境局職員で,1人は2001年1月24日,傷害事件と覚せい剤不法所持で,もう1人は同3月29日,覚せい剤使用(容疑)でそれぞれ警察に逮捕され,市は2人を懲戒免職にしている。
今年度に入っても,5月11日,やはり環境局職員が覚せい剤使用を理由に逮捕され,懲戒免職になっている。最近半年間だけで3人が覚せい剤で捕まったことになる。
2001年1,3月に懲戒免職を受けた職員の事件は,新聞でも報道されたが,今年5月の処分は6月7日現在,一般には公表されていない。公務員が覚せい剤で逮捕,その職員を懲戒処分にしたことは,(京都市にとってはそうめずらしいことではないとはいえ)行政にとって大事件のはずだ。それを進んで発表しない市の対応は大いに疑問である。
1996年度以降,京都市は,覚せい剤事件で11人の市職員(コカイン使用を含めると12人=全員環境局所属)をクビにしたことになる(別項参照)。少なくともわたしはこれだけ大量の不良職員を抱える日本の自治体を他に知らない。
なお,京都市人事課の説明によると,これらの逮捕者を懲戒免職にする際,市の関係者が勾留されている容疑者に接見して,事実関係を確認しているという。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――●覚せい剤事件で懲戒免職になった京都市職員数(01年6月1日現在)
年度 96 97 98 99 00 01 合計
人数 1 3 4 *1 *2 1 12
- *99年度の1件はコカイン使用,00年度中の1件は覚せい剤「所持」によるもの,それ以外はすべて「使用」である。
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◎同和対策で大量の不適格者を雇用してきたことを認める京都市なぜ京都市に,しかも環境局に不良職員が集中しているのか。間違いなく同和対策事業が関係している。
京都市は,同和地区住民の「雇用」対策を名目に,環境局などの現業労務職員の採用権限を事実上,部落解放同盟と全国部落解放運動連合会に譲り渡し,各運動団体の推薦者を職員として採用する,いわゆる「同和選考採用」制度を実施してきている。この制度によって,全体からみると一部とはいえ,大量の問題職員,ひどい場合は暴力団関係者さえも公務員になれる道が開かれた。
解放同盟京都市協事務局長の宮崎茂氏は1996年9月,わたしの取材にたいし,「同和選考採用」制度の歪みを次のように認めている。
- ――市の事業の中で今もっとも市民の関心を集めていることの一つに選考採用問題がある。この一,二年だけをみても同盟推薦で入った市職員が,婦女暴行,覚せい剤所持,恐喝,詐欺,暴力団とのかかわり,発砲など,驚くべき事件を続発させている。市協としてこれをどう考えているのか。
宮崎 この間の不祥事は推薦の基準にズレがあったことは認める。選考採用は地区住民の生活安定と就業の促進の一環としてやってきた。しかし現実には組織拡大に使ってきたことは事実だ。公務員としてふさわしいかどうかという論議よりも,運動にどれだけ参加してきたかということを基準にしてきた。同盟の運動に参加するほうも運動にほれて参加するというより,市職員になれる,全解連よりこっちのほうが枠も多そうだしすぐ入れてもらえそうだ,という理由で入る人が多いのもまた事実だ。(拙著『だれも書かなかった「部落」』かもがわ出版)
京都市との調整役として,「同和選考採用」制度にかかわった運動団体元役員Z氏も,次のように,そのむちゃくちゃな実態を認めている。
- ――京都市のほうから,たとえば本当に就職に困っている人を推薦してくれ,公務員としての適性を考えてくれといった要望を受けることはなかったのか。
Z そういうことはいっさいなかった。すべて運動団体まかせや。京都市が唯一断ってくるケースは,健康上の問題やな。とくに胸の病気を持った人。それ以外は事実上フリーパスや。「雇用」がはじまった当初は,地区住民の生活の安定という目的だったはずやけど,これまで話したように,いまの実態はそんなこと関係なしやね。
――採用される人のなかには,こんなやつが公務員になるのか,と思わざるを得ない人もいるのか。Z まあ,おるやろな。正直言って。現実にそのことでいろんな社会問題が起こっているんやから。(拙著『「同和」中毒都市』かもがわ出版)
そして,なによりも京都市みずから,「雇用」(「同和選考採用」)では,公務員として相応しくない人物も雇い続けてしまっていたことを,公式の文書で認めている。
「いわゆる『雇用』については、平成7年度から見直しを進めているところであるが、平成9年度採用分からは、一般公募枠を大幅に拡大するとともに、選考方法に改善を加え、公務員としての適性を備えた者を採用するよう見直しを行ったところである」(1997年4月,副市長名で出された依命通達「同和行政の改革を進めるに当たって」)
京都市は,不祥事続発にたいする市民の批判に押され,この「同和選考採用」制度を2002年3月でやめ,現業職員も一般公募で採用することを明言している。しかし,すでにかなりの公務員不適格者が採用されていることが推測される。本来の目的から逸脱した同和行政の歪みはそう簡単には克服されそうにない。
なお,今回公開された懲戒処分一覧表からは,この他にも「同和選考採用」による市政全体を覆う重大な歪みを読み取ることができる。次号で報告しよう。
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