7月21日の参議院選挙を前に、日本共産党のキャラクターが話題を集めている。 共産党のウェブサイトには、眉毛をつり上げ、赤ちゃんを背負った「小曽館育子」という名の母親が登場。彼女はすでに10人の子持ちだが、「あと1人産んで、将来は家族でサッカーチームをつくりたいねん」 と意気揚々だ。
また、「ポーケン師匠」と称する厳格な憲法専門家や、職を転々としている25歳の「ヨーコ」も登場する。彼女はサングラスとトレンチコートを常に着用しているが、コートの内にムチを隠し持っているという噂もある「謎多き」女性だ。
彼らは8人のマスコットで構成する日本共産党「カクサン(拡散)部」のメンバー。91年の歴史を持つ共産党のイメージ刷新を目指す中核部隊だ。共産党はそれらのマスコットを通じ、ハイテクに強い流行に敏感な政党というイメージを広めようとしている。
日本では4月にインターネットを用いた選挙運動が解禁されたことを受け、他の政党もネットの活用を試みている。自民党はスマートフォン向けのアプリ「あべぴょん」を先月公開。安倍晋三総裁を模したキャラが飛び上がるゲームだ。
だが、共産党ほど徹底したネット戦略を繰り広げている政党はどこもない。Tシャツを着てメガホンを持った日本共産党「カクサン部」のマスコットが、東京の屋外スクリーンに大々的に映し出され、有権者に支持を訴えかけている。「カクサン部」のメンバーは全員がツイッターのアカウントを持ち、共産党のマニフェストをツイートしている。
そればかりか、「カクサン部」は自分たちのテーマソングを作曲。「思っているほど怖くはないさ―けっこう気さくでいいやつばかりさ」というリズミカルな曲が、ラップ、ピアノ、リミックスなど7種類のバージョンでアップロードできる(7月19日現在)。
共産党の課題はイメージの刷新だ。共産党は全世界で退潮が続いているが、日本共産党は過去10年間、勢力を維持してきた。現在の国会議員は14人。主要7カ国(G7)の中で共産党が国会に議席を持っているのはフランスと日本だけだ。
しかし、国政選挙での得票率が落ち込み、党員の大半が労組や教員で占められるなか、2004年に発表した綱領の「資本主義を打倒し、社会主義的変革を成し遂げる」という目的に必要な若くて流行に敏感な党員を獲得できずにいた。
「カクサン部」のアイデアは、自民党が圧勝して安倍政権が誕生し、共産党が1議席減らして8議席にとどまった昨年12月の総選挙について、今年初めに行ったフィードバック会合で生まれた。
田村一志宣伝局次長(50歳)によると、党外からは共産党のメッセージが分かりにくいという声が多く寄せられており、党のメッセージを明確に伝えるためインターネットを活用すべきと提案された。
田村次長やインターネット・タスクフォースのメンバー10人は、「ゆるキャラ」と呼ばれる可愛らしいマスコットの人気が高まっていることに注目し、共産党のキャラクターを作ることを決めた。キャンペーンを請け負った広告代理店は「日本許さん党」という名称のキャラクターを提案したが、田村次長はそれを拒否。代わりに、グループの色を濃いピンクにするというアイデアが採用された。
田村次長は「やっぱりいいんじゃないかと。真っ赤でもない。若い人たち、やっぱり楽しく思ってくれたりするというのがすごく大事だと思います」と語っている。
田村次長のチームと広告代理店は、名前からパーソナリティなど、キャラクターの詳細について煮詰める作業を続けた。あるミーティングでは、憲法専門家である「ポーケン師匠」を最初の案よりも若くし、武道の専門家とするアイデアが議論された。また、子供を持つ家族を代表するキャラクターが必要だと決定。広告代理店から10人の子供を持つ「小曽館育子」のアイデアが提示された際、田村次長は子供の数の多さに空いた口が塞がらなかったという。「その場で色々議論になりましたけれど、それはそれでいいんじゃないかと」。
田村次長は、「カクサン部」のキャラクターの中では、ムーンフェイスで、下半身とヘアスタイルがメガホンの形をした「カクサン部長」が最もお気に入りだ。
他のキャラクターとしては、ほっぺで歩き、増税に厳しい目を向ける「がまぐっちゃん」や、原発の話になると怒り狂う「オテントSUN」などがいる。
実際にキャラクターを制作する段階になって、1つの懸念が浮かび上がった。それは、年配の党員からの反応だった。田村次長は「最初は、年配の方からふざけているという反応がくるかと僕らは心配していたけれど、あまりなかった。もっとやってくれという感じですよ」と話す。
一方、田村次長は「ヨーコ」が本当にムチを持っているかなど、「カクサン部」の秘密事項については堅く口を閉ざす。「持っているかもしれない。あまり深い意味はない」。
今のところ、一部には冷ややかな見方もあるが、「カクサン部」は概ね好評のようだ。
「カクサン部」の議論を掲載したサイトには「広告代理店の提案だろうか? だとしても、共産党がこれを採用したのは凄いな」といった投稿が寄せられている。一方で、「カクサンじゃなくてカクメイはどうした?」といった批判的な投稿もある。
7月12日に東京で開催された共産党の集会に参加した中町つとむさんは「今までは堅いイメージでしたし、共産党という透明に偏見を持つ人も多かった。だけど最近はそれが変わってきたと思います。サイトを見てもそうですが、カクサン部とか、イメージを大きく変えてきている」と語っている。
少し離れたところでは、メガホンを持った「カクサン部」のキャラクターが描かれたピンクのシルクハット型の帽子をかぶった男性のグループが集まっていた。
インターネットを通じたイメージチェンジであろうが、他の理由によるものであろうが、共産党には何らかの変化が生まれているようだ。
参議院選挙の前哨戦とされた先の東京都議会選挙では、共産党が1997年以来最大の議席を獲得し、議席数は民主党を2議席上回った。21日の参議院選挙では、改選される121議席のうち共産党は5議席の獲得を目指している。
一方、「カクサン部」では、ムチを隠しているとされる「ヨーコ」が人気を集めている。17日に共産党が放映したオンライン・テレビショーでは、「ヨーコ」が視聴者から最も多くの票を獲得した。
Hello
Your question to the Journal Community Your comments on articles will show your real name and not a username.Why?
Create a Journal Community profile to avoid this message in the future. (As a member you agree to use your real name when participating in the Journal Community)