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痛くない注射針の会社が1億円もの所得隠し、日本のモノ作りの残念な結末

ニュースの教科書編集部

2013年07月21日 09:02

 痛くない注射針を開発したことで知られ、日本の物作りの象徴として賞賛されていた東京の金属加工会社岡野工業が、架空の経費を計上したとして東京国税局から1億円超の所得隠しを指摘されていたことが明らかになった。追徴税額は重加算税を含め約4900万円。既に修正申告を済ませているという。
 NHKなどの報道によると、同社は取引先に自動車部品を発注したように装い、支払った代金を還流させる手口を使って架空の経費を計上。2011年までの5年間で1億円超の所得隠しを指摘されたという。

 同社では「国税局と見解の相違があったが、修正申告には応じた」としている。だがその話は額面通りには受け取らない方がよさそうだ。税務当局と企業の間で見解の相違があることは日常的なことであり、時として税務当局は無茶な課税をするのも事実だ。だが今回のケースで国税庁は同社に対して重加算税を課しており、かなり悪質と判断していることをうかがわせる。もし支払った代金を本当に環流させていたのならそれは裏金とみなされる可能性が高く、代表者の責任は極めて重い。

 同社は先端の直径が0.2ミリの画期的な注射針を開発したことで知られ、中小企業庁が公表する「元気なモノ作り中小企業」にも選ばれた。一時は日本の物作りの象徴してもてはやされ、同社の岡野社長はマスコミの寵児となったこともある。

 だが当時から、同社に対する周囲の扱いや同社の経営姿勢に違和感を覚える人は少なくなかった。同社が開発した注射針が日本の物作りの象徴として世界に誇るべき画期的なものであるならば、本来なら、たちまち世界的な医療器具メーカーに成長してもおかしくないからである。だが、同社は現在も売上高わずか6億円の零細企業のままである。

 おそらく、同社も、同社を賞賛した周囲も、同社が下請けの零細企業としての立場であり続けることを望んでいたのだろう。実際、岡野社長は会社を大きくしない方針を宣言していた。
 だが日本の産業は、こうした優秀な中小企業が隷属的な下請けのままでいることの弊害が極めて大きいのも事実だ。元請け下請けという関係は、実は戦争中の国家総動員法によって強制的に作られたものである。だが戦争が終わって70年経った今でもその構造は変わっておらず、労働者の機会均等や賃金分配の面で大きな弊害となっている。
 同一の労働でも、大企業の方が賃金が高く、中小企業の方が圧倒的に安いという状況は、経済合理性を欠くとともに、階層の固定化という問題を生み出しているのだ。
 もし同社のような画期的な技術を持った会社が次々と急成長し、こうした既存秩序にチャレンジしていけば、日本経済がここまで停滞することもなかっただろう。

 同社は経費を架空計上するほど利益が上がっていたということであり、この経費を正々堂々と研究開発費に回し、会社を成長させていればと考えると、非常に残念なことである。

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