生活保護のリアル みわよしこ
【政策ウォッチ編・第32回】 2013年7月19日 みわよしこ [フリーランス・ライター]

参院選直前、各党の選挙公約をどう読み解くか?
生活保護への立ち位置で分かる“政党の本音”

――政策ウォッチ編・第32回

2013年7月21日の参議院選挙が、次の日曜日に迫ってきた。今回は、生活保護をはじめとする社会保障に関して、各党の公約を比較してみたい。

選挙に際しての争点とはなりにくいと考えられている生活保護問題に目を凝らすことで、各党の本音が浮かび上がってくるはずだ。

“タテマエ”の選挙公約から
読み取れる数多くの情報

 公約やマニフェスト・遊説などの内容が「必ず実現される」と信じている選挙民は、それほど多くないだろう。それらの言葉は基本的に、選挙戦を勝ち抜くために語られるものであり、いわば「タテマエ」「よそ行き」の顔である。いったん選挙戦を勝ち抜いてしまったら、次の選挙までは、完全な実現を迫られることはまずない。選挙戦の後、各政党・各議員にとっての最優先課題が「選挙戦を勝ち抜く」ではなくなることを考えると、公約等が実現されないことは、むしろ自然なことであるとも言える。各政党・各候補者が当選後に何を考え、どういう活動をするかを知りたければ、公約等ではなく、議会での活動の状況や具体的な発言に注目する方が有用だろう。

 しかし公約等からは、数多くの情報を読み取ることができる。投票してもらうための「きれいごと」を主張するにあたって、想定されている読み手はどのような人々だろうか? 実現の可能性は、どの程度考えられているだろうか? 議席を獲得した場合、与党であれば、どのように方針を実現していく方針だろうか? 野党であれば、与党に対して説得力のある形で疑問を提出することができるだろうか? 与党であっても、異議や少数意見に耳を傾けずに「実行」することは、少なくとも立法府では許されてはならないと思う。野党であれば、実行する立場には立たないが、与党方針に対するチェック・必要であれば牽制などの「実行」を求めなくてはならないと思う。

 生活保護をはじめとする社会保障に関して、与党として、あるいは野党として、それぞれに求められる「実行」ができそうかどうか。今回は、公約等から、可能な限り、それらの情報を読み取ってみたい。

生活困窮者支援に対する
基本的な考え方を比較する

 まずは、各党の公約等から、生活困窮者支援に関する部分を抜粋し、「拡大路線」「維持路線」「縮小路線」の3通りに分類してみた。

●拡大路線

共産党の「2013年参院選挙政策」。生活保護に関する記述は7000文字を超え、事実・事例に基づいた充実の内容だ。賛否いずれにしても一読の価値あり
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共産党

「6、生活保護・福祉
自公政権が推進する生活保護の大改悪を阻止し、貧困の打開、福祉の充実をはかります
安倍政権の生活保護改悪を許さず、必要な人すべてが受けられる生活保護へ」以下に、非常に具体的かつ詳細な記載がある。大きな特徴は、漏給問題の深刻さと、漏給対策の重要性を訴えていることだ。その他にも、事実に基づいた数々の問題提起がある。生活保護・貧困をめぐる現状を理解するために、一読する価値がある。

緑の党

「最低賃金・生活保護・基礎年金の拡充で年間200 万円の最低所得保障を実現し、将来的なベーシック・インカムの導入に向けた制度設計に取り組む。」
 「低家賃の公営住宅の拡充、低所得者への空き家の提供・家賃補助などによって住まいの権利を保障する。」
 「人生前半の社会保障(児童手当、保育サービス、奨学金の無償給付、職業訓練、若者基礎年金など)の充実で「子どもの貧困」をなくす。」

●維持路線

公明党

「生活困窮者対策等の拡充・強化
生活困窮者が自立でき、安心して暮らすことができるよう、総合的な生活困窮者支援の体制を整備します。生活困窮者に対する包括的な相談支援事業、中間的な就労の場の提供、教育学習支援、住まいの確保のための給付金の支給など、地域の実情に応じて実行できる施策です。また、低所得世帯などに対する生活福祉資金貸付制度など既存の制度を含め、万全なセーフティネットを構築します。

制度の狭間や複数の福祉課題を抱えるなど、既存の福祉サービスだけでは対応困難な事案の解決に取り組むコミュニティソーシャルワーカー(CSW)を配置し、地域における見守り・発見・つなぎ機能の強化を図ります。
子どもの将来が、生まれ育った環境によって左右されず、健やかに育成される環境を整備するため、教育の機会均等、生活支援、経済的支援、保護者の就労支援など、子どもの貧困対策を総合的に推進する体制をつくります。
全国平均1000円をめざし最低賃金の着実な引き上げを図ります。」

社民党

「暮らしの底上げ
生活保護制度の改悪を許しません。受給額が減少する生活保護世帯は96%。特に子どもの貧困化が心配です。また、生活保護費の基準は、税金や保険料などにも影響するため、国民生活に大きな混乱、大きな負担増を強いることになりかねません。セーフティネットを守り、「健康で文化的な最低限度の生活」の底上げに取り組みます。生活に困窮する人々を個別的・継続的に支える「パーソナル・サポート」サービスを確立します。」

生活の党

「貧困対策の強化
● 貧困等により困窮する家庭における子どもを乳幼児期・児童期から重点的に支援し、貧困の連鎖を断ち切るための対策を強化する。
● 生活保護については、被保護者等を対象とする過剰な医療行為の提供等貧困ビジネスの解消や、就労支援の強化、ケースワーカーの適切な配置を図るとともに、適正な受給体制を整備する。 」

みどりの風

「社会保障改革
誰もが納得できる負担と給付のバランスのとれた社会保障制度を確立します。最後はしっかり国が支えるセーフティネットの再構築。障がいがあっても安心して暮らせる社会づくりを進めます。」

民主党

「●真に支援が必要な人に適切に生活保護の認定を行う一方で、不正受給を防止し、医療扶助に関する電子レセプト点検の強化や後発医薬品使用の促進など適正化を進めます。
●生活保護基準引下げについては、生活保護世帯のみならず、多くの低所得者が負担増となることが懸念されるため、その影響や実態把握を行い、勤労者世帯がさらなる生活苦に陥らないよう見直しを求めます。」

●縮小路線

自民党

「「自助」・「自立」を第一に、「共助」と「公助」を組み合わせ、税や社会保険料を負担する国民の立場に立って、持続可能な社会保障制度を構築します。」

「自民党主導で昨年とりまとめられた「社会保障制度改革推進法」に基づき、「社会保障制度改革国民会議」の審議の結果等を踏まえて、医療制度、介護制度、年金制度などの社会保障制度について必要な見直しを行います。」

日本維新の会

「自立化に向けた生活保護制度の見直し(公営住宅の活用等現物支給の拡大、受給認定の適正化)、本当に必要な人が保護を受けられる制度に改革する。」

みんなの党

 具体的な記載がほとんど見当たらない。関連する記載は下記など。

「また、年金・社会保険制度のムダや世代間・職業間格差は、現役世代の意欲を削ぎ、消費性向を抑制します。抜本的な改革で、がんばれば報われる社会にしなければなりません。」

各党の生活困窮者支援政策の
具体性は? 財源は? 

「何を実行する(方向性)」「どのように実行する(手段)」という視点からの具体性のレベルを、筆者の独断で評価した。拡大・維持路線の各党に関しては、社会保障費の財源として考えられているものも併記した。

 共産党と自民党を除くと、具体性や実現可能性のレベルでは似たり寄ったりだ。社会保障に関して、公約等だけを参考にして投票先を選択することはできそうにはない。といって、サイコロを振ったり鉛筆を転がしたりして決めるわけには行かないだろう。

投票に際して筆者が
「女性」「当落線上」「なるべく50歳以下」を選ぶワケ

 実は、筆者自身は、公約の比較検討によって投票先を選択しているわけではない。公約は大いに参考にするけれども、最後の選択は、

「なるべく女性、なるべく当落線上にある、できれば50歳以下の候補者を選択する」

 という方針で行なっている。

 とはいえ、女性の候補者たちがしばしば主張する「女性ならではの視点」や育児・介護等の経験に期待を寄せているわけではない。

 筆者が国会議員に期待することは、参議院・衆議院の2つの立法の場を民主主義に基づく議論の場として機能させ、充実させることである。さらに、質問や法案といったアウトプットを出すことである。問題にしているのは、「国会議員として有能であるかどうか」「政治的意見や立ち位置が自分自身と極度に異ならないかどうか」の2点だけである。

 とはいえ、筆者自身は、有能かどうかに関しても、政治的意見と立ち位置に関しても、性別が何らかのモノサシや参考になるとは思っていない。それでも女性候補者を選択するのは、現在の国会の女性比率が、先進国として「ありえない」レベルで低すぎるからである。

 2012年末の衆議院選挙で、衆議院の女性比率は7.9%となった。参議院の女性比率は、衆議院に比べるとやや高く、前回2010年の選挙後に18.2%となっていた。しかしいずれも、人口の半分を代表しているということを考えれば、せめて30%以上であることが必要ではないだろうか?

 このような視点から、筆者は基本的に、女性候補に投票することにしている。当落線上にある候補者を選ぶのは、自分の投票行動によって何かが変わる可能性に賭けたいからだ。

 また、できれば50歳以下の候補者を選択するようにもしている。国会議員の仕事は、体力・気力・精神力とも充実していなくては遂行できない激務だからだ。とはいえ、実のところ、年齢はそれほど重要視していない。

 現職の全国会議員の年齢構成は、現在、

40歳以下   87名
41-50歳  201名
51-60歳  207名
61-70歳  177名
71歳以上   45名

 となっており、一般にイメージされる「老害」という状況ではなくなっている。むしろ、選挙民の年齢構成を考えれば、充分に若い候補者が選択されていると考えてよい。

 本来ならば、少なくとも16%とみられる貧困層を代表して、せめて10%の貧困層出身の議員・あるいは貧困層の人々の代弁者として行動する議員が、国政から地方自治まで、どのような議会にも存在している必要があるだろう。この他にも、議会の構成には、さまざまな歪みがある。一有権者が、その歪みのすべてを正すことは不可能だ。だから筆者はとりあえず、男女比を正すための選択を続けている。

 次回は、生まれつき障害を持つ生活保護当事者の生活と思いを紹介する。8月1日から実施予定となっている生活保護基準の引き下げは、どのような人々を直撃するのであろうか?

<お知らせ>
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本田由紀氏推薦文
「この本が差し出す様々な『リアル』は、生活保護への憎悪という濃霧を吹き払う一陣の風となるだろう」