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参院選 どこを推します?

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3.TPP(2013/07/11)

 7月23日から日本が交渉に参加する環太平洋連携協定(TPP)。関税撤廃や規制緩和などを経済成長につなげたい推進派と、安い輸入農産品で打撃を受ける農家や、食の安全、国民皆保険制度などが脅かされることを危ぶむ慎重派との間には溝がある。44年間コメづくり一筋の農家エイイチさん(62)と、商社勤務の息子コウジさん(29)が持論をぶつけ合った。

参加にどんなメリット?  輸出増え景気良くなるよ

 コウジ いよいよ日本がTPP交渉に合流するね。関税が撤廃されれば自動車や家電製品などの輸出を増やせるから、道内の製造業や鉄鋼業などにも多大な恩恵があるはず。入国手続きを簡素にしたり、金融ルールを統一して自由貿易を加速させたりすることは、世界を股にかける僕たちの会社にとって、またとない機会だよ。

 エイイチ 随分、景気のいい話だな。

 コウジ 国内ではこれから一段と人口が減るから、代わりにアジアの成長を取り込むことが必要なんだ。経済学者の多くは推進派だし、安倍晋三政権も「TPPは成長戦略の柱」と言っているでしょ。安い輸入食品がたくさん店に並んだり、海外産の原料を使う外食産業の値下げにもつながったりするから、家計にとってもメリットは大きいと思うよ。

 エイイチ 声が大きくなってきたな。具体的にどのくらいプラスになるんだい。

 コウジ 政府が3月に経済的な影響の試算を発表している。すべての関税を即時撤廃してからほぼ10年後を想定すると、実質国内総生産(GDP)は毎年3兆2千億円(0・66%)ずつの底上げがあるよ。輸出増で所得が伸びるのに加え、安い輸入品が増えることで購買力が増し、消費が3兆円増えると想定しているんだ。日本はバブル崩壊後、景気低迷が続き「失われた20年」と言われているよね。こんないい話に乗らない手はないよ。

 エイイチ TPPは打ち出の小づちではないぞ。農林水産省の試算では、関税の即時撤廃により主な農林水産物の生産額は7兆1千億円から3兆円減る。父さんが長年つくってきたコメは数量で32%、金額で1兆100億円減ってしまう。隣で畜産を営んでいる宮森さんの豚肉は、70%も生産が減る。チャンスととらえて農産物の輸出に乗り出す農家もいるだろうが、自由貿易となれば常に激しい競争にさらされるのだから、うちのマチで成功するのは一握りだろう。おまえの生まれ育ったこのマチも、どうなるか分からんな。

 コウジ そんなことにしてはいけないから、国会でコメ、麦、乳製品、牛肉・豚肉、甘味資源作物の関税撤廃除外を求める決議をしたんでしょ。

 エイイチ 確かに交渉事はやってみないと分からない。だが、既に米国との事前協議では輸入日本車の当面の関税維持に加え、かんぽ生命保険の新商品の認可が凍結されるなど高い「入場料」を払わされた。米国以外の国もTPPを通して自国の利益をいかに増やそうかと血眼になっている。9018ある日本の貿易品目のうち、重要5農産物に含まれるのは6・5%の586品目。これらの関税が維持されば、関税撤廃の割合を示す自由化率は93・5%にとどまる。TPPでは98%程度まで自由化率を高めようとしているから、守るのは極めて難しいぞ。

 コウジ 関税分野以外でも、心配していることがあるようだね。

 エイイチ 食の安全・安心の問題だな。日本は消費者の関心が高く、食品添加物や残留農薬などの規制を厳しくしている。海外から見れば日本へ輸出しにくいから緩めてほしいという要望がある。それと国民皆保険制度が守られるか心配する声も強い。米国は企業の病院経営への参入を求めている。混合診療も全面解禁されれば国民皆保険制度もぐらつきかねない。

 コウジ 各党の主張をみてみると、大きく三つに分かれるね。自民、公明両党は基本的に推進。民主党も党内で意見が一致していないものの推進だ。ただ、道内では基幹産業である1次産業への影響に配慮して、自民党は慎重姿勢、民主党は反対姿勢を強く打ち出している。一方、国民生活に影響があるとして強く反対しているのが生活、共産、社民、みどり、大地の各党。みんな、維新はより積極的な推進だ。

 エイイチ TPPは大都市にメリット、地方にデメリットが多くなる可能性が強い。地域によって考え方はさまざまだろうが、マチのあり方を変えかねない問題として慎重に投票先を考えてほしい。

(東京報道センターの舟崎雅人が担当しました)

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