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参院選 どこを推します?

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7.年金(2013/07/15)

 働く現役世代から保険料を集め、高齢者の暮らしを支える公的年金は社会保障制度の柱だ。少子化で現役世代が減る一方、年金など社会保障に支えられる高齢者は増え続けていく。改革は避けて通れないが、多くの政党は公約で有権者の負担増につながる政策は打ち出していない。年金で暮らすケンゾウさん(71)と孫の会社員ナナエさん(24)が語り合った。

給付額が膨らんでおるぞ  制度の改革が必要そうね

 ナナエ 私の月収は約25万円で、厚生年金の保険料は毎月2万円も自己負担している。今の高齢者の年金に回されているそうだけど、本音を言うと貯金に回したいわ。

 ケンゾウ 公的年金は、私ら高齢者世帯の所得の7割を占めるんじゃ。日本の公的年金は、現役世代が保険料を支払い、それを財源にして高齢世代に年金を給付している。世代間で支え合っているんだよ。これを「賦課方式」と呼ぶんじゃ。

 ナナエ そもそも何で今、年金などの社会保障制度の在り方が問われているの。

 ケンゾウ 私ら65歳以上の高齢者が増える一方、保険料や税金を負担するナナエのような現役で働く世代が減るからじゃよ。年金、医療、介護などを合わせた社会保障は、半世紀前には高齢者1人をおおよそ現役世代9人で支える「胴上げ型」だった。ところが現在は3人弱で1人を支え、2060年になると、1人を1・2人で支える「肩車型」になるんじゃ。

 ナナエ 高齢化も進むから、年金などの給付も増えるわよね。

 ケンゾウ 社会保障の水準を今のまま維持しようとすると、なんと毎年3兆円程度の給付の増加が見込まれるんじゃ。なんらかの改革が必要になるというわけだ。

 ナナエ 昨年、消費税増税を決定した時に社会保障改革もやることになっていなかったっけ。

 ケンゾウ 自民、公明、民主の3党は社会保障制度改革国民会議で1年かけて議論することにしたんだ。同会議は参院選後の8月上旬に報告書をまとめる予定だよ。これまでの論議では「年金支給開始年齢の引き上げ議論が必要」などの提言が盛り込まれそうだが、現行制度の修正にとどまる見通しじゃ。

 ナナエ 参院選の公約で、自民党は「国民会議の審議結果を踏まえ、必要な見直しを行う」としているだけよ。一方、野党は、低所得者層に配慮する「最低保障年金の創設」「低年金の底上げ」を掲げるなど、主張はさまざま。どういう違いがあるのかよく分からないよ。

 ケンゾウ 大きな考え方として、個人が自分の暮らしに責任を持つ「自助」「自立」に軸足を置くか、社会全体で弱者を支える「公助」「共助」に軸足を置くかの違いがある。税金を投入した最低保障年金創設は、「公助」「共助」の考えと言えるな。でもこうした年金拡充策には、どうやって財源を確保するかという大きな問題が残されたままじゃ。

 ナナエ 一部野党は「若い世代が『払い損』にならないよう、賦課方式から積み立て方式へ移行する」と唱えている。積み立て方式って何かしら。

 ケンゾウ 現行の賦課方式は、現役世代のお金を高齢世代に渡す「仕送り型」だ。それを自分が支払った保険料を老後になってから自分で受け取る「貯蓄型」に変えるイメージじゃな。ただ、当分の間は、現役世代が高齢世代の年金と、将来の自分のための積み立て分を両方払わなければならなくなる、との指摘もある。公的年金を大きく変えるのは簡単じゃないんだ。

 ナナエ サラリーマン世帯の専業主婦らの「第3号被保険者」の扱いも気になるわ。自分で保険料を払わないのに、老後に基礎年金を受け取れるんだから。私みたいに働いて保険料を払っている側からすると、不公平に思えるわ。それにしても、参院選では年金の論議が盛り上がっていない気がする。

 ケンゾウ 確かに各党の公約に、国民に痛みを求める内容はあまり見当たらないな。それでも改革は避けて通れない。今後、物価が上昇すると、デフレ下では適用されなかった年金給付を抑える仕組み(マクロ経済スライド)が働き、実質的に給付額が減ることになる。ナナエも、年金制度に不満があるなら声を上げなきゃな。

 ナナエ 将来、私たちの世代は、おじいちゃんたちと同じように年金をもらえるのかしら…。そんな不安もあるわ。年金は、遠い将来の問題ではなく、私たちが今、向き合わなければならない問題なのね。=おわり=

(東京報道センターの戸田一光が担当しました)

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