ノリコ　憲法ってあまり熱心に勉強してなかったんだけど、変えてはダメなものだと思っていた。でも最近、ずいぶん憲法改正という言葉を聞くわ。

　ケンタ　そうだね。憲法をどうやったら変えられるかということは、９６条に書いてある。まず、衆院と参院それぞれの総議員の３分の２が賛成して初めて、「こういう憲法にしたいんですが、どうですか」という改正案を国民に提案できる。それについて国民が賛成か反対かを投票して、賛成が過半数なら憲法を変えられるんだ。

　ノリコ　国会が発議して、国民投票を行うのね。

　ケンタ　そう。でも、この「３分の２」という要件が、改正を阻む高いハードルになっているとの声がある。実際、１９４７年に施行された憲法は、一度も変えられたことがないし、最近の国政選挙ではほとんど争点になってこなかった。改憲を持論とする安倍さんが、まずは「３分の２」を過半数に変えたい、と言い出してから、急に議論が熱を帯びてきたんだ。

　ノリコ　憲法は普通の法律より上位にあるはずよ。改正要件を緩めて、権力者が思い通りに憲法を変える提案ができるようにするなんて、ルール違反みたいに聞こえるけど。

　ケンタ　そういう意見もある。ただ、国民は憲法を変える権利を持っているのに、その権利を使えないっていうのはどうなんだろう。一度は憲法を自分たちの手で変えてみたいと思わない？　僕は９条を変えて、日本も軍隊を持つと書き込みたい。その方が現実に合っていると思うよ。

　ノリコ　そんなことをしたら、日本がまた戦争することになりかねないわ。この前、インターネットで自民党の憲法改正草案というのを読んだの。自衛隊を「国防軍」という名前に変えたり、天皇を「元首」と位置付けたり、米国が攻撃されたら日本が助けに加われるようになっていたり、何だかすごく怖くなった。自由に団体をつくったり、物を言ったりする「表現の自由」が制限されることになるって言う人もいるわ。

　ケンタ　自民党は憲法を改正したい人たちが集まってつくった党だから、改正案を発表するのは当然だよ。衆院では、安倍さんと同じように憲法を改正したがっている日本維新の会と自民党の議席を足すと、憲法改正の提案に必要な３分の２を超える。参院選の結果次第では憲法改正も夢じゃない、ということで自民党も張り切っているんだろうな。

　ノリコ　でも、自民党と連立を組んでいる公明党は、憲法を変えるのに慎重だって新聞に書いてあったわ。自民党の思うようにはいかないんじゃない？

　ケンタ　確かに公明党は、特に９６条改正には慎重だね。彼らは「改憲」とは言わず、プライバシーや環境を守る権利なんかを加える「加憲」がいいって言っているよ。でも、憲法を変えるためなら、自民党は公明党でなくても他の党と手を組めばいいんだから。各党の改憲派を結集して、３分の２以上になればいいじゃない。

　ノリコ　よくそんな簡単に言えるわね。私は万が一、国民投票になったら、断固として反対票を投じるわ。憲法改正に反対している党を応援したいな。

　ケンタ　自民党や維新は改憲に賛成だけど、みんなの党は憲法を変える前に行政改革とかやるべきことがあると言っている。基本的には改憲賛成派ではあるけどね。共産、社民両党は憲法改正そのものに絶対反対している。ただ、分からないのは民主党なんだよなあ。

　ノリコ　どうして？

　ケンタ　９６条をほかの条文より先に変えることには反対しているけど、９６条を変えること自体に反対しているのかは分からない。「創憲」と言っていたこともあったし。その他の条文についてもはっきりしないんだよ。

　ノリコ　憲法について自分でしっかり考えて、見極めるしかないってことね。

（東京報道センターの森貴子、平岡伸志が担当しました）