学習内容の特性と学び方・学ばせ方 |
概念の学び方・学ばせ方概念は、単なる任意の連合ではなく、抽象によってできたものである。それは多数の観念を比較し、その特質の同じ点、異なる点に注意し、共通の特質だけを取り出し(抽象)、その特質をまとめて(概括)作った代表的な観念であり、普通は言葉で表される(命名)。例えば、「四角形」という概念についてみれば、三角形、四角形、五角形などの多数の観念を比較し、その特質の同じ点、異なる点(辺の数、角の数)に注意し、共通の特質(四つの辺、四つの角)だけを取り出し(抽象)、その特質をまとめて(概括)作った代表的観念である。そこでは、形の大小、角の大小、置かれた位置の違いにかかわらず、四つの辺、四つの角をもてば「四角形」ということを理解することになる。 子どもが各教科の学習において理解しなければならない概念は非常に多いので、その学習課程を理解し、適切な指導を加えることが必要である。 概念の学習においては、概念についての理解を具体的なものから抽象的なものへ、漠然としたものから明白なものへ、不正確なものから正確なものへと発達させることが目標になる。この場合、与えられた多くの刺激を比較し、抽象し、概括するといった思考の働きが重要になる。つまり、概念の学習では、単に記憶だけでなく思考が働くようになる。 概念の学習の指導としては、観察(操作を含む)によって学習させる方法と概念の定義をさせることによって学習させる方法とある。 観察による学習では、子どもの現実の生活場面で実際に経験させて概念を理解させようとする。しかし、同じ経験を反復させるだけでは、概念の意味は拡大されることも、深められることもない。例えば、「角のない牛」だけ見ていると、子どもは、「牛とは角のない動物だ」という間違った印象をもつことになる。同様に「四角形」というとき、「正方形」ばかり見ていると、四角形についての正しい概念はできない。 現実の場面で学習させると、生き生きとした現実感を与え、学習意欲を高める効果もあるが、その場面は複雑であるので、子どもを混乱させ、かえって概念の本質的特徴を見失わせることがある。この場合には、図解したり、説明を加えたりして、その概念の本質的特徴に注意を集中させることが必要である。 また、概念の学習において、概念の特徴を含んでいる積極的な例(正事例)を見せる場合とその概念の特徴を含んでいない消極的な例(負事例)を見せる場合とあるが、一般には、まず積極的な例で基本的な特徴を理解させた上で消極的な例を示すのがよい。 定義による学習は、言葉を用いて概念を理解させる方法である。つまり、定義をいわせたり、文章の中で使用させたり、同意語をいわせたりして概念の意味を理解させるのである。この場合には、教えようとする概念に対して前提となっている概念を理解しているかどうかを調べ、不十分なときには、学習に先立ってそれを教えておかなければならない。 なお、概念の学習においては、子どものおかす誤りは、指導に対してよい機会を与える。任意の連合の学習では、誤った場合にはすぐ訂正することが大事であるが、概念の学習では、誤りを手がかりにして、その概念が何を含み、何を含まないかを知らせることができる。 |