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(社説)政治家の家族観 変わる現実に向きあえ

:この半世紀の家族の変化
拡大この半世紀の家族の変化

 参院選は、実は「家族」が争点なのかもしれない。

 例えば、自民党は家族の役割を強調する。昨年まとめた憲法改正草案には「家族は、互いに助け合わなければならない」とあり、今回の公約でもそれを紹介している。

 各党の候補者が抱く家族像も異なる。

 朝日新聞社と東京大学・谷口将紀研究室の調査で「夫婦と複数の子どもがそろっているのが家族の基本形だ」「シングルマザーや(共働きで子どもがいない)DINKSなど家族の形は多様でよい」のどちらに近いか聞いたところ、自民は前者、民主は後者が過半を占めた。

 維新は前者寄り。社民は全員、共産もほとんどが後者で、公明、みんなも後者寄りだ。

 だが、自民党が描く伝統的な家族像は、現実と大きくずれている。

 ■折れやすい「大黒柱」

 10年の国勢調査では、1世帯の平均は2・42人。4人を超えた半世紀前とは様変わりだ。

 一人暮らしの世帯は32・4%と、初めて夫婦と子どもの世帯を上回った。どのタイプが標準とはいえなくなっている。

 夫が「一家の大黒柱」として家族のぶんまで稼ぎ、専業主婦が家庭を守る。そんな役割分担も崩れ、いまや夫婦を含む世帯のうちの3割に満たない。

 夫婦の役割分担を取り戻すべきだという人もいるが、現実的だろうか。

 かつてそれができたのは、経済成長を背景に、企業が夫の終身雇用を約束し、家族の生活費まで払えたからだ。

 いま収入は減り、倒産やリストラのおそれも増している。配偶者の暴力による離婚も後を絶たない。「大黒柱」に寄りかかっていれば安心、という時代ではない。

 実際、貧困が際だつのは、シングルマザーや夫に先立たれた高齢者、つまり大黒柱に頼れなくなった女性たちだ。

 一方、企業は正社員を非正社員に置き換え、「家族を養う」期待に応えられる若者は減っている。非婚・晩婚に拍車がかかる原因は、こんなところにもあるのだろう。

 ■にじむ自己責任論

 問題は、家族の力が弱っているのに、家族の力に頼る仕組みが続いていることだ。

 自民党政権は長年、夫婦と子ども2人の世帯を「標準」とみなし、専業主婦に有利な社会保障や税制を築いてきた。

 半面、子育てや教育は家族に頼り、支援は薄いままだ。

 昔ながらの家族像へのこだわりのあまり制度を改められず、少子化を加速させた面はなかったか。

 経済にとっても、少子化は重い足かせだ。金融緩和や財政出動を重ねたところで、未来を担う世代がどんどん細るようでは豊かな社会は望めない。

 自民党も、そんな危機感を抱いているのだろう。

 安倍首相は、成長戦略の柱に「女性の活躍」を掲げ、待機児童解消などを打ち出した。それじたい一歩前進だ。

 ただ、どこまで頭が切り替わっているのか。「3年間抱っこし放題」の言葉の裏に、女性は家で子育てを、という意識が隠れていないか。

 先の通常国会で、政府・自民党は、家族の役割の法制化を試みた。

 いじめ対策の立法の際、「保護者の責務」を記そうとした。

 廃案になった生活保護法改正案には、役所が親族に扶養義務を果たすよう働きかけやすくする権限強化を盛った。

 一方で、生活保護費の削減が進む。財政が苦しいから、家族で支えあえ。家族の美名を借りた自己責任論ではないか。

 ■家族を支える施策を

 「家族で」支えあうことは大切だ。だが、家族の力が弱っているときに、支えあうのが日本の美風だからと説いても仕方がない。いま必要なのは「家族を」支えることだ。

 複数の柱があれば、1本が折れても簡単には壊れない。「大黒柱であらねば」という重荷から解放されれば、若者も結婚しやすくなる。

 子育てに行き詰まり、虐待してしまう親がいる。一人暮らしのお年寄りが増えている。

 多様な家族の形を前提に、社会保障や税制をつくりかえる。血縁に限らない社会のつながりで、家族の機能を補う取り組みを後押しする。それが政治の役割だろう。

 その力量こそが問われる。

 

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