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「めがみっくす!+」 第一話「うにょと武器と落下するオレ」【配信後 3日間購読無料!】

2013-07-16 17:00
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    めがみっくす!+
    第一話「うにょと武器と落下するオレ」

    ―――――――――――――――――――――――――――

    オレは興味深々で扉に近づいてみた。
    何故って? そこに扉があるからさっ!
    どこかの登山家のように言ってみる。でもなんか虚しい…

    気を取り直して扉の前に立ってみると、向こう側には何も見えない。
    敢えて表現するなら、「闇」か「深淵」だろうか。

    「うわっ!」

    突如、引っ張られるような感覚に襲われると、オレは扉の中に強烈な力で吸い込まれる。さっき覗いたまま、そこには何もなく暗闇がただ広がっている。床もなかった。

    一瞬の浮遊感の後、オレは落下する。まるでジェットコースターの頂上から一気に落ちる時みたいな、顔がこわばって息を呑む。そんな感覚だ。

    「うわわわわーーーーーっ!」

    オレ、大絶叫。

    そりゃそうだ。底の見えない暗闇の中で、安全器具どころかパラシュートそのものが無い状態でのスカイダイビング。
    落下しはじめてからすでに数十秒は経過してる気がする。もしかしたら走馬灯のように実は一瞬、とかかも知れないけどな。
    齢17でオレってば死亡ですか? どこでそんなフラグ立ったんですか? せめて彼女くらい欲しかったなぁ…
    ん? 彼女?

    …しばし考える。(オレ、落ちてます)

    ……もっと考える。(オレ、更に落ち続けてます)

    ………!!! (オレ、まだまだ落下中です)

    そうだ、ディーテ。ディーテだ!
    彼女ならなんとかできるんじゃないか? なんか飛んでた気もするしな。そうと決まれば話は早い。
    オレは渾身の力を腹に込めて、叫ぶ。

    「ディーテーーーーーーーーー!!!」

    暗闇の空間にオレの声が響き渡る。こだました様子はない。かなり広いんだろう。
    オレは「ディーテに届いてくれ!」と、心の中でひたすら祈る。

    「はいです」
    ディーテの声がオレの耳元で声が聞こえた。

    「※ー△×◇+□-○!」

    ビックリし過ぎて、宇宙人でも呼び出しそうなよく分からん声が出てしまった。
    声の方に振り返ると、ディーテが一緒に落ちてる。
    いや、ふわふわという感じなので落ちてる、とは表現し難いか。浮いてる、といった方がいいかも知れない。
    落下スピードは多分一緒だと思うんだけどな。不思議がひとつふたつ増えたところで、もうどうでもよくなってきた。
    しかぁーし! ひとつ許せないことがある。
    このスピードでなぜ! なぜディーテのひらひらのスカートはめくれないんだぁ! だぁ、だぁ、だぁ……
    声には出さずに心で絶叫する。もちろんエコーも忘れない。
    オレってけっこう余裕あるな。もしかしたら順応性が高いんだろうか。それとも、思春期男子のエッチ心は死亡フラグも凌駕するんだろうか?

    「ディーテ?」
    「はいです?」
    不思議そうな顔で何?という顔。やっぱりムッチャ可愛いっす! 勢いで「彼女になって下さいっ!」とか言いそうになったオレは、ちょっと待て、と思い直す。
    まずは落下止めないと死亡だろ? 万が一ディーテがオッケーしたとしても、そのまま即死じゃ、未練が残りまくりで地縛霊とかになって化けてでるんじゃないの、オレ?
    「ディーテ、この落下止められる?」
    オレは率直に聞いてみた。
    「はいですよ♪」
    とディーテが返事すると、落下はスッと止まる。ふわっとした感覚がオレを包み、ディーテのように浮いてる感じになった。と思うと、足の裏に何かを踏みしめる感覚。透明だけど地面みたいな感じがする。
    うわっ、あっさりかよ。さっきまでの焦りが馬鹿らしく思えてきた。大声で叫んだりして恥ずかしい…

    「勇児くん、指揮官さんが自らフライングしちゃダメですよー」
    ぷんぷんといった感じでディーテが嗜める。
    「あっ、うん、ゴメン」
    よくわからないがとりあえず謝っておく。
    「ほらっ、みなさんが慌ててついてきて、一緒に落ちてきちゃいました」
    「えっ?」
    頭上を見上げたディーテにつられて、オレもそちらを見上げる。
    なんかの塊が見えた。しだいに大きくなってくる。塊はいっぱいの点になって、局地的な集中豪雨みたいに降り注いできた。

    ベチョベチョベチョベチョ……

    オレとディーテのすぐそばに、さっきのスライムモドキたちが着地…いや、正確に言うと着地に失敗して潰れていく。
    スライムモドキのいくつかの色が混ざって、まだら模様というかマーブルというか、正直キモイ色が透明だった地面に広がっていく。
    しばらくすると、潰れたやつらが緩衝材みたいになったらしく、後から落ちてきたスライムモドキはぽよんぽよんという感じで無事に着地、周囲で蠢いている。

    「ほらっ、です」
    ぷんぷんといった表情で、ディーテが言った。
    「えっ、何が?」
    ほらっ、の意味が分からず、聞いてみる。
    「勇児くんが急に飛び込んじゃったから、戦力が減っちゃったじゃないですか。プンプンです」
    あっ、プンプンってやっぱり怒ってるんだ。でも頬を膨らませているディーテも可愛いな。こんな怒り方だったらいつでも歓迎だ。
    「なんで勇児くんはニヤニヤしてるですか?」
    不思議そうなディーテ。しまった、顔に出てたか。
    「そんなことより、こいつら一体なんなの?」
    「このコたちはですね~」
    ディーテはにこにこと話はじめた。よしっ、話は逸らせた。オレ、グッジョブ。
    っていうか、ディーテってけっこう単純?

    「可愛いですよね~。そのコたちは、'うにょ'っていうですよ~♡」
    可愛い・・・か?
    そういえば、クラスの女子がどう見てもキモくてグロイ感じのマスコットを「かわいい~♡」とか言って鞄に付けてたりしてたな。
    ちょっと前に流行ったキモカワというやつだろうか。女の子の感覚って時々よくわからないよな。そう思わないか?
    …そういやさっきから誰に問いかけてるんだ? オレ。
    まあいい。
    改めて、ゼリー状の不可思議物体のそいつらを見てみる。

    赤いのは、北欧の有名な河馬っぽい妖精の話に出てくる細長い不思議生命体をちょっと太らせたみたいな見た目だ。
    青いのはちょっと角ばってる感じだ。国民的な日本妖怪マンガに出てくる壁のやつを想像して欲しい。
    緑のは、超有名RPGに出てきそうな形をしてる。妙に愛らしいやつじゃなくて、毒持ってるやつな。

    …スライムってゲームとかだと可愛らしい見た目のも多いが、実際に見るとでっかいゼリーの塊で、うっすらとだけど器官みたいのも見えてる…気もする。
    そこにまんまるい目がついてて、視点は定まらずガチャ目みたいになってる。やっぱり可愛くないよ。キモイよコレ、ディーテ。

    オレはスライムモドキ、改め'うにょ'たちをずっと見てるのが気分悪くなってきて、ディーテを見て口直し…もとい、目の保養をすることにする。
    「で、オレが指揮官とかこいつらを戦力って言ってたよな。それってこのゲームの話?」
    「そうですよ~」
    ディーテはくるっと回って答える。肩に捲いてある長いマフラーみたいのが重さを感じさせずにふわっと翻る。
    すると、暗闇(と、うにょ)しかなかった空間に、ぶわっと星空が広がる。

    mm+_001.jpg

    ディーテが真剣な表情になる。さっきまでのきゃぴった感じではない。古書店の時にちょっと近い、なんか神秘的な雰囲気だ。

    「さあ、これからゲームが始まります。貴方は指揮官として、このコたちを導いて下さい」
    そう言って、ディーテは艶っぽい視線でうにょたちを一瞥する。
    「このコたちはそれぞれに役割をもっています。赤いコは攻撃、青いコは防御、緑のコは補助が得意ですから、上手く利用してあげて下さいね」
    「はあ」
    ディーテの変化にまだついていけてないオレは、とりあえず頷いておく。
    「敵のうにょはすべて紫色。こちらのうにょたちと同じ能力と特性を持っていますから、形で判断して下さい」
    オレはまた、こくんと頷く。
    なんかホントにゲームの説明みたいだな。
    「今回は練習です。下っ端のモンスターが敵の大将ですから、さっさと倒してしまって下さいね。貴方の武器は――」

    おおっ、オレって指揮官みたいだしな、もしかしてゲームとかでありがちな伝説の武器とかか?
    やっぱり剣が王道だよな! エクスカリバーとか草薙の剣とか、村正とかもいいな。あっ、でも、グングニルとかロンギヌスとかの槍もカッコイイよな!
    と、オレが厨二的な妄想に耽ってしまう。いやオレも男の子、ゲームも結構好きだしね?

    ディーテが右手を上げると、棒状のものがその掌に現われる。
    おっ、槍系か? ちょっとわくわくして見ているとすぐに武器が現われた。

    ………

    「さあ、この武器を手に取り、あの敵を倒すのです!」
    なんかカッコイイポーズを取ってるディーテ。
    オレはそれを受け取る。思ったよりもずっしりとした重みがある。
    「えっと、すみません。ディーテさん…」
    さっきの妄想前回とうって変わって、テンションのチョー低いオレの声。

    「はい、なんですか?」
    何故かディーテの口調が元に戻る。表情もさっきのきゃぴきゃぴした感じだ。
    「これがオレの武器?」
    「はいです♡」
    にこっと微笑む。あっ、ちょっと得したかも。
    「で、あそこに見えるのが、オレが戦う…敵?」
    「はいです♪」
    ディーテの極上の微笑み。
    その先には、さっきから「キシャー」という鳴き声を上げる巨大な蛇(ゲームの中ボスっぽい)と紫うにょがその辺りにいっぱい。こっちのうにょと同じくうごうごしてる。
    「………」

    チャラリラッチャチャッチャッチャー♪

    勇児は新しい武器を手に入れた!
    それは、匠の技で作られた(と思われる)伝説の『ひのきの棒』だっ!


    脳内でそんなフレーズが浮かんだオレは、

    → 「よし、逆境こそが勇者の証っ!」と、開き直ってディーテにいいとこ見せる。

    → 「こんなんで戦えるかぁ!」と、マジギレして(どこからか出現した)ちゃぶ台返し。

    → 「……しくしくしく」と、うにょたちに囲まれた端っぽいとこで体育座りで泣く。


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    http://yuruwota.myplayers.jp/voting/vote.php?vid=66

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    ―――――――――――――――
    しろぬこ 著
    イラスト みるくぱんだ

    企画 こたつねこ
    配信 みらい図書館/ゆるヲタ.jp
    ―――――――――――――――

    この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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