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社説

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2013参院選 安全保障 専守防衛の原則どこへ(7月19日)

 日本の安全保障政策が大きく変わろうとしている。

 政府が年内に見直す防衛計画の大綱に関し、自民党は自主憲法制定による国防軍設置や集団的自衛権の行使容認、敵基地攻撃能力の保有などを提言した。

 専守防衛を前提とする従来の安保体制を大転換する内容で、実現すれば「国のかたち」は根本的に変わるだろう。それほど重要なテーマでありながら各党の論戦は低調だ。

 このまま武力行使の歯止めを取り外す方向に進んで良いのか。各党は有権者に分かりやすく主張を伝える努力が必要だ。

 国防軍設置は自民党公約で、憲法改正草案を示す形で明記している。憲法9条の「戦争の放棄」は維持するというが、自衛隊が国防軍になれば、海外でも軍事力を行使する組織としての意味合いが強まる。

 集団的自衛権行使は、公約の基になる総合政策集で「必要最小限度の自衛権行使(集団的自衛権を含む)を明確化し『国家安全保障基本法』を制定する」と容認方針を示した。

 背景には中国の軍事的台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発があり、安倍晋三首相は年内にも行使容認に踏み切る可能性がある。

 歴代政権はこれまで、必要最低限度の自衛の範囲を超えるため行使できないという立場をとってきた。解釈変更は海外での武力行使に道を開き、憲法の平和主義から逸脱する。

 ミサイルが日本に向けて発射されるのが確実な場合に相手基地を攻撃する敵基地攻撃能力は、防衛省が導入に向け検討に入った。これも専守防衛の範囲を超える恐れが強い。

 また、離島奪還を目的に海から陸上へ攻める自衛隊の海兵隊的機能も充実させる方針だ。

 だが、一連の動きは周辺国の反発を招き、冷え込んだ中国や韓国との関係を一層悪化させる恐れが強い。

 集団的自衛権に関し、日本維新の会は公約で「行使などを定める国家安全保障法制を整備」と自民党に足並みをそろえた。

 公明党の山口那津男代表は行使容認に「断固反対」と明言し、自民党との連立継続の是非にも言及した。共産、社民両党は反対を公約に明記。みんなの党は「自衛権行使の範囲や限界を法律で明確化」とした。

 はっきりしないのが民主党だ。公約には「専守防衛の原則の下、安保体制の充実を図る」とある。だが細野豪志幹事長は対象範囲を限定した上で集団的自衛権行使を容認する発言をしている。一体どちらなのか。

 安全保障政策の根幹が深い議論もないまま変えられるのは問題だ。各党は積極的な議論を交わすべきだ。

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