遅咲きの本狂い(パート3)
テーマ:BOOKS昨日は節分の日。
さすがにアメリカでは節分の豆は手に入らなったが、鬼が入ってきては困るので、
ピーナッツで代用して、「鬼は~外、福は~内」をやっておきました。
(以下、昔話の続き。本に関してはこれが最終完結編です)
さて、そんな私が大学の文学部に入学した。
これでもう受験勉強をする必要はないわけだし、高校と違ってつまらん授業はいくらでも
サボればいいので(昔はそうだった)、好きなだけ本を読む時間ができた、というわけだ。
しかし、周りは(一応、伝統ある有名大学の)文学部の学生達である。
私のように、本などというものを読み始めて2年、などというにわか仕込みの
哲学・文学青年気取りなどとは違い、相当な読書歴、読書量をもった学生が多い。
そもそも私のそれまでの読書など、ほとんどが自分の読書力では歯が立たないような
難解な本をただ「読んでるつもり」になっているだけのむちゃくちゃなもので、
ジャンルだって偏りまくっている。
(大学に入るまで、日本の小説など両手の指で足りるぐらいしか読んだことがなかった
ばかりか、岩波新書や中公新書などの教養書・入門書も、読んでいたのはほんの数冊
だった)
そんなわけで、あせったのなんの・・・
いっぱしにプライドだけは高かったので(^^;)、
他人に「お前はこんな本も読んだことないのか・・・」とバカにされるのが、
一番こわかったからである。
とにかく、大学に入ってから大学院を終えるぐらいまでの間、
いつも「自分はみんなに遅れている。なんとか(知られないうちに)この遅れを取り戻し、
抜いてしまわねばならない」という強迫観念のようなものに苛まれながら、
本を読み続けた、と言ってもよい。
(なので、本をほんとうに「楽しんで」読めるようになったのは、私の場合30前になって
からのことだ)
今になって考えてみると、若いときに本とのこういう変なつき合い方をしたことで
かえって身についたことも少なくはないように思う。
・少々読んでわからない本についても、そこであきらめて投げ出さずに
我慢して読み続ける根気が養われた。
(哲学・思想系の研究者には重要なことである。20代ぐらいまでなら、
そうやって我慢して読み続けることで、おぼろげにわかってくるものの
中に大切なことが含まれている場合が多い)
・とにかく、多くのジャンルにまたがって、たくさんの本を実際に読んだ。
・実際には読んでいない本についても、さも読んだかのようなフリをする
テクニックが身についた。
(これは案外、人文・社会系の研究者になろうとする人にとっては重要な
テクニックである。ただし、誤解してはいけない。「フリをする」と言っても、
それを読んでいないことが周りにすぐバレてしまうような「フリ」ではいけ
ないのだ。バレてしまわないためには、その本の内容に関して、別の
ソースからきちんとした情報を得ている必要があるし、なによりもそれが
自分自身の考えていることや文章の内容と釣り合っていなければなら
ない)
そう言えば、5年ほど前に、面白い本を読んだ。
『本を読む本』という、読書指導のあり方についての本である。
簡単に言うと、子どもに本に親しませ、楽しみながら「読む本のレベル」も、
それに応じて本の「読み方・楽しみ方のレベル」も少しずつ上げていく
ためには、どのようなことが必要か、ということを理論的に考察した本だ。
・この本からすると、いかに自分はむちゃくちゃな読書人生を歩んできたか、
ということ。この本に書かれているように小さい頃から自分のレベルに合わせて
一段一段読書に親しんでいったならば、自分はこんなに苦労せずに済んだ
だろうということ。
・にもかかわらず、この本に書かれてある内容のほとんどを、自分は実感的に
わかる(我流でわけもわからずに突き進み、回り道をしながらも、結局は
本を読む、ということについてのまともな態度をそれなりに身につけることが
できたのだなあ・・・)ということだった。
不思議なもので、自分の昔話など書き出すと、いろんなことが次から次へと
思い出されてくる。
(「自分史」のようなものを書く人の気持ちがだいぶわかった気がする)
本についても、まだまだ書きたいことが山ほどある。
でもまあ、そういうのは
定年後の楽しみ(まだ20年ある? もう20年しかない?)
にとっておくのがいいかもね。
(完)
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1 ■無題
私は逆に大学生以降あまり本を読まなくなってしまいました。特に社会人になってからは読書の時間がなかなか取れなくて。。。
こっちに来てから久しぶりに読書の時間を取れるようになったので、日本で買ったものの読む時間がなくて放置していた本達を順番にやっつけています(笑)
『本を読む本』、面白そうですね。今度機会があったら取り寄せて読んでみます。
『本を読む本』