2007-01-04 09:28:25

「かもじ海苔」の由来

テーマ:雑学

元旦に山陰名物「かもじ海苔」を使ったお雑煮の写真を載せたところ、数人の方から

こんな海苔があるのを今まで知らなかった、というお言葉をいただいた。


なので、今日はグルメ教養講座ということにしましょう。

(教養はちょっとつくかもしれませんが、お腹はいっぱいになりませんので悪しからず)



かもじ海苔(十六島海苔)  左がお店に売っているかもじ海苔。

 別名(本名)「十六島(うっぷるい)海苔」

 と言い、島根県出雲市(旧平田市)近く

 の十六島周辺で採れる岩海苔である。

 (生物学的には、アサクサノリの仲間

 らしい)

 

 今ネット通販でお値段を調べてみたが、

 15gで1365円(!)と、かなりの高級

 海苔である。



 問題は、なぜこの海苔が「かもじ海苔」

 と呼ばれるようになったか、という言葉

 の由来なのであるが、

 実はこの「かもじ」とは「髪の毛」のこと

 で、こののりの形状が髪の毛に似てい

 ることからつけられた名称のようだ。





そう言っただけでピンと来る方もたぶん何人かおられることと思います。


そう!  この 「かもじ」という言葉 いわゆる「女房言葉」 なのです。


「女房言葉」とは、

室町時代ごろから宮中に仕える女房たちによって使われた独特の隠語で、

主として衣食住に直接かかわるような単語をそのまま使うのは「下品」とされた

ため、それに「お」をつけて上品にしたり(おでん、おかか、おにぎりなど)、

あるいは元の単語の一番はじめの文字を使って「○もじ」(つまり「あの、○のつく文字」と

いうように)婉曲に表現するのが特徴だ。


たとえば、「ひもじい」という語、これはもとは「ひだるい」という語だったのであるが、

「ひだるい=おなかがへった」と直接言うと「下品」なので、

「あの、「ひ」のつく言葉ね」という具合に、「ひ文字い(ひもじい)」という語でもって

表現したわけである。


髪の毛も、直接に「髪」とか言うと下品なので、

たぶん「あら、そなたも「かもじ」が伸びたわねえ」などと言ったのだろう。


現代では、

「俺、あいつに「ホの字」なんだ」(=惚れている)というような表現が

わりとこれに近いのではないかと思う。



というわけで、

大学教師の本能がうずき(?)、久しぶりに「講義」をさせていただきました(^^;)。


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コメント

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1 ■雑煮と海苔

雑煮に海苔を入れる地方はいくつかあるのかな。
今日、熊本出身の方と雑煮の話をしていたら、水前寺海苔を雑煮に入れると言ってました。
うちの地方では、大井川の河口付近でとれる島田海苔という淡水のりを雑煮に入れる。これが切れると正月じゃない、青海苔などでは絶対満足できない、いわんや白味噌、丸もちなど出てこようものなら、卓袱台をひっくり返そうかという。他の食物に関しては無節操なんですが、ほんと雑煮だけは保守主義者になってしまうんだよね。と、新年早々、熱く語ってしまいました。失礼!

2 ■Re:雑煮と海苔

たしか秋田の雑煮にも岩海苔を入れると聞いたことがあります。

でも、山陰の雑煮はみんなかもじ海苔を使っているわけでもなく、どちらかというと小豆を入れた甘い雑煮(つまり「ぜんざい」)が主流のような気がします。
ただ、餅を焼かないで、湯に通して柔らかくするだけだというところは両者に共通。

そもそも、ぼくは全然山陰の人間ではなく、大阪生まれの大阪育ちで、なのになぜか関東風の醤油だしの雑煮で育ち、結婚してからかもじ海苔を使った山陰風に目覚めてそれが習慣になってしまった(もう16年)、というきわめて「節操のない」人間ですが(笑)。

3 ■勉強になりました~~!!

なるほど~~~!!確かに髪の毛みたい!!
先生、講義ありがとうございました!
こういう講義だったら、大学の授業、寝ないできけたのになあ~ぼそり

面白い名前だなあって、思ってたのでトリビア~95へえでした!

4 ■知ったのは最近

「女房言葉」についての知識は少しありましたが、
(「しゃくし(杓子)」→「しゃもじ」なんかもそうですね)、「かもじ海苔」の「かもじ」もそうだと知ったのは最近のことです。
こういう「語源」って、調べていくと面白いのがいっぱいありますね。

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