◇名古屋場所<13日目>
横綱白鵬(28)=宮城野=が大関琴欧洲を寄り切って13連勝。1人だけ2敗だった碧山が敗れたため、3場所連続26度目の優勝が決まり、連勝は43に伸びた。優勝回数は朝青龍を上回り単独3位。3連覇以上は4度目で大鵬、千代の富士に並び最多となった。十両は新十両の遠藤(22)=追手風=が初優勝。以下、一番下の序ノ口までの優勝が13日目に決まった。日本相撲協会によると、13日目に優勝者が全て決定するのは、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降で初めて。
土俵に向かう横綱は太ももから順番に、最後は胸と肩をバシバシたたいて気合を入れた。
12日目に琴奨菊を下した際に痛めた右脇腹には背中にかけて4本の太いテーピングが。腹圧を上げ、少しでも痛みを和らげるためだ。テーピングのやり方が分からないため、付け人が専門家に巻いてもらい、取組直前にそれを手本に巻いた。『チーム白鵬』が一丸となって戦いに挑んだ。
必死だった。「70%の力でいい」が持論。「100%だったら後は落ちるしかない」というのがその理由だ。だが、この日はすべてを出し切った。立ち合いで当たるとすぐ琴欧洲の右腕をたぐった。肉離れを起こしている右が使えないのか、左へ左へと回り込みながら攻め続けた。
「速い相撲で勝負をつけたいと思っていた。とにかく動き勝つつもりでいきました」。ケガについては「全然問題ないです」と笑い飛ばしたが、横綱にとって右は大事な利き腕だ。上手を引く左よりも、右が使えないダメージが大きかった。
負傷した前夜に名古屋市内の病院で検査と治療を受けた。師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)は「夜中ずっと氷で冷やして、湿布を貼ってた。痛み止めをもらっていると思う。本人が乗り越えなきゃいけない」と不安と期待を織り交ぜて話していたが、横綱は見事に乗り越えた。
モンゴルの先輩、朝青龍を抜き単独3位となる26回目の優勝を、千代の富士を抜き史上最多の5回目となる13日目Vで飾った。残すは10回目の全勝優勝。「あと2日は伸び伸びやりたい」。達成すれば大鵬の45連勝に2度目の到達となる。 (岸本隆)
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