OL時代は“腫れ物”だった 芸人・大久保佳代子の「孤独力」
ダ・ヴィンチ電子ナビ 7月19日(金)11時50分配信
『私、地味女』(大久保佳代子/大和出版) |
いま、もっともブレイクしている芸人といえば、オアシズの大久保佳代子。数々のバラエティ番組に引っ張りだこ状態で、4月からは初の冠番組『大久保じゃあナイト』のほかに、壇蜜とのタッグが話題の『だんくぼ』がスタート。さらに大人気の朝ドラ『あまちゃん』にも、能年玲奈演じる主人公アキの父親の愛人役として出演するなど、テレビで観ない日はないほどの活躍ぶりだ。
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大久保がウケている理由としてよく挙げられるのは、その毒舌だ。男や女の“ウザさ”に忌憚なく切り込み、視聴者に嫌われがちな下ネタも受け入れられているよう。だが、大久保の本当の魅力は、OLと芸人の“二足のわらじ”をはいていた時代に磨いた“孤独力”ではないだろうか。
まず、大久保の経歴を紹介すると、彼女は大学時代に幼なじみの光浦靖子とコンビを結成。深夜にレギュラー番組も獲得したが、その後、大久保だけが「笑えないブス」という理由でレギュラーを外されることに。足場は芸能界から会社に置かれるようになったが、そのうち『めちゃイケ』に“OLの大久保さん”として出演し、『ロンドンハーツ』をはじめとする番組で存在感を強め、現在のブレイクへと至る。とても地道に現在の地位を築いたのだ。
著書『私、地味女』(大久保佳代子/大和出版)によれば、OL時代はコールセンターのオペレーターをしていたという大久保。芸能人なのにOLという特異さはさぞかしもてはやされたのではと思うが、会社でのポジションは「“腫れ物”を経て“空気”的存在になりつつ」あったらしい。
入社当時は「週5日バリバリ仕事をこなすキャリアウーマンもどき」だったと振り返る大久保。しかし、ある出来事から一転したという。それは、ある研修で新人アルバイトから「えっ? 大久保って、あの大久保じゃねぇ?」「ほら、光浦の相方で、めちゃイケとかたまに出てて」と声があがったときに起こった。「私の説明をするときに、光浦さんの名前を出されるのが非常に嫌い」だった大久保は、「業務以外の話は、しないでください。するなら帰ってください!」とその場でブチキレ。それ以来、「誰も私に、個人的な会話をしてこなくなった」という。大久保にとってOL時代は、社内で孤立し、とても孤独な生活だったようだ。
その孤独に輪をかけるように、会社と芸能界を行ったり来たりする“二重生活”では、「自分がわからなくなってしまう」こともあったらしい。たとえば、『めちゃイケ』の収録がある日は、「至れり尽くせりの1日」。スタイリストが用意した衣装を着て、プロのヘアメイクを施され、収録の合間にはADがすかさず飲み物を持ってきてくれるし、収録後はスタッフが頭を下げて見送られる中、タクシーで帰宅。そうしてちやほやされた翌日は、会社に行くと「何だかイライラ」。「作成した資料の誤字脱字やらの誤りを指摘され、直すように指示される」と、
「誰に向かって言ってんの?(中略)私は、もっとセンス勝負のクリエイティブな仕事をする人間なんだから」
と苛立つことも。でも、「波風を立てるのは大嫌い」な大久保は、「今日中にやっちゃいます」と返事してイライラを見せないように心がけていたよう。もちろん「自分の甚だしい勘違いっぷり」は自覚しており、「何様だよ!」と自分でツッコミも入れている。
また、大久保は「会社に私の代わりはいくらでもいるけど、芸能界に私の代わりはいなく、唯一無二の存在なわけで、私がいないと成立しないし」と書いたすぐあとに、「嘘。全然成立する。私の代わりなんて山ほどいる」と綴っている。テレビではいつも強気な大久保だが、また違う素顔があるようだ。
いまはOLを辞め、芸能界一本の大久保。しかし、華やかな世界と一般社会を行き来してきたからこそ味わった孤独は、現在の向こう見ずな毒舌を支えているのではないだろうか。
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)
最終更新:7月19日(金)11時50分
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