【日本株週間展望】6週続伸へ、審判受け政策推進期待-決算好感も
7月19日(ブルームバーグ):7月4週(22-26日)の日本株は6週続伸し、日経平均株価 は約2カ月ぶりに1万5000円を回復しそうだ。21日投開票の参院選では自民、公明の与党勝利が確実視され、衆参の多数派が異なる「ねじれ」が解消し、国内景気浮揚に向けた安倍政権の政策推進期待が高まりやすい。
大和証券投資戦略部・情報課の高橋卓也副部長は、「前のめりで織り込んできたとはいえ、ねじれ解消による政権基盤の安定化、成長戦略など政策への期待が高まる点は相場にプラス」と指摘。今後は安倍晋三首相が実際に何をやるのかが重要だが、「参院選の余韻のある中で決算発表も始まり、円安を背景に変化率、進捗(しんちょく)率が高い企業が増えれば、素直に好材料」と見ている。
第3週の日経平均は前の週末に比べ0.6%高の1万4589円91銭、TOPIX は0.8%高の1211.98と小幅ながら5週連続で上昇。米国や中国の経済・金融情勢に対する不安が後退、米国株の史上最高値更新でリスクマネーの流入期待も続く中、ドル・円相場が1ドル=100円台に乗せる円安基調となったことも安心感を誘った。
昨年末に再登板した安倍政権の審判となる第23回参院選は、国内の主要全国紙・テレビ局が行った事前の世論調査、情勢分析で、自民、公明両党の獲得議席数は非改選の59と合わせ、過半数の122議席を上回る見込みだ。日本企業の好業績見通しを背景に、短期的に日本株の上昇が続くと予想する英投資顧問スミザーズのアンドルー・スミザーズ会長は、仮に政府が減価償却引当金や法人税の引き下げ政策などに踏み込めば、相場は「大きな押し上げを受ける可能性がある」と言う。
海外勢の買い意欲強い米BOAメリルリンチの世界ファンドマネジャー調査によると、日本株のオーバーウエート比率は7月に27%と前月から10ポイント上昇。割高との見方も11ポイント低下のマイナス8%と、3カ月ぶりに割安との判断に振れ、今後1年間に最もオーバーウエートしたい市場、企業収益見通しが明るい市場では日本が単独1位となっている。
メリルリンチ日本証券の株式ストラテジスト、神山直樹氏は「投資家は日銀の政策そのものが変わったわけではないこと、政府の政策が参院選後でも大きく変わると予想する必要がないと理解している」との認識だ。5月下旬の相場急落後は、日本株買いの勢いが鈍った海外投資家 だったが、6月最終週以降は週間で4151億円、4301億円、3321億円と1000億円単位での買い越しが続く。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券エクイティリサーチ部のチーフストラテジスト、芳賀沼千里氏は7月上旬、欧州投資家を訪問した。現地の運用担当者らは日本株を前向きに評価、日本企業の増益率が主要国の中で高いことなどを背景にオーバーウエートにしている向きが目立ち、「2カ月前の日本株上昇には過熱感があったが、今は業績がついてきているというコメントがあった」という。
構造改革期待が海外投資家の買いにつながったケースでは、郵政民営化の是非を争点とした2005年9月の解散総選挙後の動きが挙げられ、国内外で人気の高かった小泉純一郎首相(当時)率いる与党の圧勝を受け、海外勢は9-11月の3カ月間で4兆2000億円 余り買い越した。
好業績観測、日本のプラス面評価へ第4週は、国内3月決算企業の4-6月期(第1四半期)業績の開示が本格化する。23日には日本電産 、25日に信越化学工業 、日産自動車 、アドバンテスト、26日にJFEホールディングス 、スタンレー電気、リコー 、野村ホールディングス 、NTTドコモなどが公表予定だ。
みずほ証券リサーチ&コンサルティングのまとめによると、期初段階で東証1部3月決算銘柄の今期経常利益見通しは、前期比27%増。素材、加工を中心とした製造業が全体をけん引するとみられる中、現状のドル・円相場は日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)で示される今年度の想定レート(1ドル=91円20銭)よりも円安水準で、上振れ期待が出やすい状況にある。
東証1部銘柄の業績モメンタムを示すリビジョン・インデックスは、17日時点でプラス3.3%。4月時点のプラス15.3%からは縮小、円安による輸入物価の上昇を販売価格に転嫁できない一部小売企業が押し下げ、10日時点ではマイナス2.6%に落ち込んでいた。ただ、ビジネスモデルで二極化が進む小売セクター 以外は、依然堅調のようだ。
大和証の高橋氏も、「企業の多くは第1四半期から上方修正してくるわけではないが、実態として想定より円安が進んでいる」と日本企業の業績上振れ余力に言及。株式相場にとって、中国の経済動向がリスク要因として意識される半面、住宅市場を中心に景気堅調な「米国、日本のプラス材料がマイナス材料に勝る局面」と読む。
経済協力開発機構(OECD)が毎月公表する景気先行指数を国・地域別に見ると、直近公表分の5月時点で日本が101.3と米国の101.0、ユーロ圏の100.3、英国の100.7、アジアの99.6などを抑え最も高い。
日本株を評価する海外勢の空気に触れた三菱Uモルガンの芳賀沼氏。ただ、構造的な改革が進まなければ、金融緩和と円安では高齢化、政府債務の課題は克服できないとも見られているとし、「日本がどのような国を目指し、痛みを伴う改革をどこまで受け入れるのかを投資家は知りたがっている」とも言う。参院選後の安倍政権に、ハネムーン期間は残されていない。
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更新日時: 2013/07/19 15:57 JST