東京工業大学は、同大学が現在運用中の高性能コンピューター「TSUBAME2.0」を改修し、「TSUBAME2.5」として2013年9月にフル稼働させると発表した。TSUBAME2.5の演算容量は倍精度演算では5.7PFLOPS、単精度演算では17PFLOPSになる見通しで、単精度演算性能では理化学研究所の「京コンピューター」を抜くことになる。
TSUBAME2.5では、TSUBAME2.0のグラフィックス処理プロセサ(GPU)を、米NVIDIAの「Fermi」世代から「Kepler」世代の製品に変更することなどで演算性能を倍精度演算で約2.4倍、単精度演算では約3.5倍に引き上げる。
ちなみに、浮動小数点演算において単精度演算は32ビットの数、倍精度演算は64ビットの数を扱う。この違いは、計算する問題によっては、微分方程式などの計算誤差の違いにつながることがある。その一方で、「流体のシミュレーションなどの問題は単精度演算で十分である例が多い。必要もないのに倍精度演算が使われていることもある」(東京工業大学 学術国際情報センター 教授の松岡聡氏)。
単精度演算でも演算速度は非常に重要で、演算速度が速いと、計算規模や計算の格子数を増やしやすくなる。その結果、得られる結果の精度が飛躍的に高まることも多い。今回、東京工業大学は、単精度演算性能を重点的に高めることで、浮動小数点演算の計算誤差が増えるかもしれないデメリットよりも、演算速度の向上によるメリットを重視したといえる。
松岡氏は2008年に開発した「TSUBAME1.2」でも、単精度演算を重視した設計を選んでいる。TSUBAME1.2の単精度演算容量は 0.91PFLOPSで、当時のTOP500の第1位だった米IBM社「Roadrunner」の1.105PFLOPS(倍精度)に匹敵する。一方、 TSUBAME1.2の倍精度演算容量は0.17PFLOPSだった。
■急増するスパコンへのニーズに早期対応
東京工業大学は当初、TSUBAME2.0を2014年後半まで利用し、数十PFLOPSを見込むTSUBAME3.0につなげる予定だった。しかし、「TSUBAME.2.0への需要が2012年ごろから急増し、計算資源は現在パンク状態」(松岡氏)で、演算性能の増強が急務と判断。しかも、プロセサメーカーの開発ロードマップとの関係で、2014年後半では最新アーキテクチャーの製品が入手しにくいといった事情から、TSUBAME2.5をまずは開発、導入し、その一方でTSUBAME3.0の導入を2015年後半に延期することにしたという。
TSUBAME2.5のシステムの構築は、NECと日本ヒューレット・パッカード、そしてエヌビディア・ジャパンが担当する。
(日経エレクトロニクス 野澤哲生)
[Tech-On! 2013年7月16日掲載]
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