いまから2カ月前で結論も出た話なので、もう書いてもいいだろう。私は安倍に「衆参ダブル選挙は考えないのか」と聞いた。衆院が違憲状態なので、選挙で改憲の話を言うなら、まず衆院解散が先になる。そこで参院選に合わせて、ダブルで総選挙に打って出る可能性はないか、と尋ねたのだ。
私自身はできるなら「すみやかに解散すべきだ」と考える。それは政権が改憲を目指そうが、目指すまいが関係ない。裁判所から憲法違反と指摘されて、国会が対応しないのは政治の怠慢と思うからだ。まして政権が改憲を唱えるなら、なおさらという話である。
それに対する安倍の答えは「できるものなら、やりたいよね」だった。それから言葉を続けて「でも長谷川さん、日程が間に合わないんだ」と言った。
つまり、衆院で1票の格差を是正する0増5減の公職選挙法改正案を成立させて、そこから1カ月の周知期間をおくと、7月21日の参院選投開票日に間に合わないという話である。実際、0増5減法案が衆院の再議決で成立したのは6月24日だったので、参院選には間に合わなかった。
そこで、次が本当のポイントである。安倍はそう説明した後、思案顔で「でも、すっきりしたいよねえ」と言ったのだ。
安倍首相が学んだ「失敗の教訓」
私はこれを聞いて、安倍は「すっかり分かっている」と確信した。安倍は「いまの衆院は"違憲"であり、したがって政権も"違憲"なのだ」という点を十分に理解している。こう書くと「お前はそれで平気なのか。違憲の政権を認めるのか」というような批判が飛んでくるかもしれない。それには、もう答えた。私は「早く解散すべし」論だ。
安倍は高裁判決が相次いだ結果、少なくとも論理的には政権の違憲性をしっかりと認識している、という点が肝心である。だからこそ「すっきりしたい」という発言が出てくるのだ。そうだとすると、なぜ安倍はそれでも改憲を訴えるのか。
それには、安倍自身が答えている。たとえば、国会閉幕後の記者会見(6月26日)ではこう述べた。
〈憲法改正については、私は先の衆議院選挙において96条から始めたいと申し上げました。いわば我々が憲法の議論をリードする形ができたことによって、憲法改正、これはあまりリアリティを持った議論ではなかったのですね。初めてリアリティを持った議論、現実に憲法改正というのは、だんだん現実的に政治課題として表れつつある。国民のみなさまにも認識していただいたという意味においては、まず第1段階の目的は達成できたと思っているのです〉
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