Interview:片嶋一貴 「たとえば檸檬」監督
毎日新聞 2013年01月17日 東京夕刊
◇母と娘のねじれた関係
映画「たとえば檸檬(れもん)」が、東京・シネマート六本木ほかで公開中だ。母の家庭内暴力や万引きに悩まされる20歳のカオリ(韓英恵)と、引きこもりの娘を持つ40歳の香織(有森也実)。2人のかおりの愛憎劇を演出した片嶋一貴監督に聞いた。
「人間関係の最小単位としての親子、しかも、語られることの少ない母と娘のねじれた関係を描いた」。母親からの過干渉が原因の一つとなる、境界性人格障害を物語の核に据えた。「この障害が最近クローズアップされている。母と娘の葛藤は生々しく、母性愛神話が崩れてきている」
「韓は怒り、有森は狂気を保ち続けてくれた。役者の意欲と才気で成り立っている」と絶賛。
2人のかおりは救われない。「安直な救いや幸せは提示したくなかったので、鑑賞後のすっきり感はない。重くのしかかってくるような描写を全編に貫き通した」と話した。【鈴木隆】