山形のニュース
山形への原発事故避難者 疎外感と怒り充満
 | 経済的負担が避難生活にのしかかり、山形県村山総合支庁で働く避難者の女性たち |
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福島第1原発事故の影響で山形県内に避難している福島県からの有権者が、複雑な思いで参院選(21日投票)と向き合っている。山形への避難者は全国で最も多い8151人(4日現在)。長期化する厳しい避難生活に反して、原発政策をめぐる論戦は乏しく、候補者情報も少ない。疎外感や怒りを抱きながら、投票日を迎える。
「避難者への支援策が伝わってこない。選挙を身近に感じられない」 郡山市から中学1年の長男と山形市に避難している女性(44)が、やるせなさそうに話す。住民票は移しておらず、投票するのは福島選挙区の候補者だが、郡山市からは投票所入場券が送られてきただけ。選挙公報は郡山市が昨年12月の衆院選から、避難者が転居しているケースが多いことを理由に郵送しなくなったため、手元にない。疎外感すら抱く。 「インターネットを使えば、候補者の政策が調べられることは分かる。でも余裕がない」。避難者の生活と健康への支援策が盛り込まれた「子ども・被災者支援法」に期待した。しかし、対象地域が決まらず、施行後1年以上も中ぶらりんのままになっている。 子どもの健康を考えた末、夫と離れて母子2人で暮らすことを選んだ。山形と郡山を行き来する交通費や食費など二重生活による経済的負担は大きい。国の緊急雇用対策の求人に応募し、昨年4月から山形県村山総合支庁でパートタイムで仕事をしている。 支庁ではこの女性を含め、同じ事情で10人の主婦らが働く。共通の悩みを話し合えることが何より心強い。最近、話題に上るのはパートの雇用期間。「いつまで働けるのか。借り上げ住宅の家賃補助や、高速道路の無料化の期限も気になる」。不安を抱えながら、職場に通う。 「事故が起きた選挙区なのに、脱原発への具体的な道筋が語られないのはおかしい。愚かだ」 原発事故の被災者らでつくる「福島原発被災者フォーラム山形・福島」代表の武田徹さん(72)は憤る。 事故が収束しない中、しかも選挙期間中に5原発10基の再稼働が申請された。福島選挙区の主要候補はいずれも「県内原発全基廃炉」を訴えて、政策の対立軸はかすむ。 武田さんは事故後、福島市を離れ、米沢市の雇用促進住宅で暮らす。借り上げ住宅の住み替え、除雪費の負担減など避難生活の改善に向け、国や福島県、東京電力と掛け合ってきた。独自に続ける避難者調査では、事故前と事故後を比べると一世帯当たりの生活費は平均約10万円増えている。 「本来は政治家がすべきこと。避難者が声を上げないと、事故の矮小(わいしょう)化、風化が進む。生き抜くために行動している」 避難生活が長引くにつれ、被災者たちの悩みは深まっている。「諦めては何も始まらない。投票は怒りや不安をぶつける機会だ」。武田さんが力を込めた。
2013年07月19日金曜日
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