◆ブランド化を視野
標高三、七七六メートルの世界で、食べ物の味はどう変わる? 静岡県東部農林事務所(沼津市)などは十八日から、旧富士山測候所の建物内で緑茶や米、肉を長期熟成させ、味わいや品質の変化を確かめる試験を始める。
昨年、県内の茶生産者が山頂で加工段階の荒茶を熟成させたところ「味がまろやかになった」との評価を得たことから、県は低温、低酸素状態で貯蔵することで他の食品にも深い味わいがもたらされる可能性があるとみている。ゆくゆくは世界文化遺産に登録された富士山の名前を冠した食のブランド創設につなげる考えだ。
山頂付近の酸素濃度は平地の約六割で、七月の平均気温は四・九度。試験では県産の緑茶、紅茶、ウーロン茶、米、県産米を醸造した日本酒を約一年間、牛肉や鹿肉は十八日から約四十日間貯蔵する。県内の研究施設の保冷庫などに入れておいたものと比較し、品質などの変化を調べる。
気象庁から研究目的で旧富士山測候所を借りているNPO法人の協力を得て、貯蔵場所を確保した。十八日には、ブルドーザーで茶や米など計約百キロを山頂まで一気に運び上げる。
東部農林事務所生産振興課の沢野郁夫課長は「熟成が進むことが分かれば、商品の開発につながる。未知のことも多いが、詳しいデータを集めたい」と意気込んでいる。
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