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【工場けんがく! 北関東ものづくり探訪】

手作り生ゆば試食も 日光ゆば製造日光工場(栃木県日光市)

ガラス越しにゆばの製造工程が見学できる(日光ゆば製造提供)=日光市で

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 約一年半前に日光に赴任した際に、知り合いに連れて行ってもらった居酒屋で日光の味の一つとして、ゆばの刺し身を味わった。淡泊な味ながら、トロリとした食感と舌に残る甘みが日本酒と見事にマッチした。

 ゆばの製造工程が見学できると聞き、日光ゆば製造日光工場を訪れた。

 工場では、大きなガラス越しにゆばの製造工程をのぞく。

 ゆばは、豆乳を温めて、表面にできる薄い黄色の膜をすくったもの。タンパク質やカルシウム、鉄分などが豊富な上、低カロリーで消化のいい健康食として知られる。

 京都ゆばが膜が一枚なのに対して、日光ゆばは二枚重ねで、その間に豆乳が残り、トロリとした食感が特徴。日光は、平安時代に男体山を初登頂した勝道上人(しょうどうしょうにん)によって開山された。以来、山にこもる修験者や僧侶が保存の利く栄養食として利用したとの歴史も持つ。

 ガラスの向こうでは、マスクとかっぽう着姿の従業員が、ステンレス製のゆば槽の前に立つ。約九〇〜九五度で湯煎した豆乳がなみなみと入ったゆば槽から、棒で表面に張った膜を丁寧に引き上げている。

 作業は、午前八時から開始。数分ごとに膜がすくわれていく。引き上げたばかりのゆばは、生ゆばとして刺し身などに食される。二時間半ほどで豆乳の質が変わるため、その後は二十五分ほどかけて厚めの膜を作り、豆腐状のよせゆばや、団子状のたぐりゆばなどにする。

 案内してくれた営業部長の狐塚督(こづかただし)さん(56)は、「普通の工場とは違い、ゆば製造はすべてが手作業。一つ一つ丹精を込めて作っている。効率的ではないが、手間をかけている姿を見てもらえれば」と工場見学の狙いを話す。

 見学後、工場に隣接する直売店へ。小さなステンレス槽が二つ置かれ、予約すれば、ゆばの引き上げ体験(有料)もできる。

 直売店では、工場でできたばかりの生ゆばとよせゆばを試食することができた。よせゆばは、クリームチーズのようにまったりとし、ほのかに甘い。デザートにもいい。

 世界遺産の二社一寺、鬼怒川温泉など日光の観光地への行き帰りに、できたばかりのゆばを味わうのもまた、旅の楽しみに加えたい。(石川徹也)

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◆メモ

 日光ゆば製造日光工場 1988年稼働。約50人が働く。日光市猪倉赤堀の県道沿いにあり、日光宇都宮道路大沢インターから車で約5分。

 見学時間は約30分。個人での工場見学は予約不要で無料。10人以上の団体や、ゆばの引き上げ体験(料金は人数により異なる)を希望する場合は、約1週間前までに予約。見学は午前10時から午後3時まで。日曜祝日と水曜休み。問い合わせは、日光工場=電0288(26)4890=へ。

 直売店は午後5時までで、日曜も営業。生ゆばをはじめ、ゆばギョーザや揚巻ゆばなどゆばを使った加工品が置かれ、旅の土産物としても好評だ。

 

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