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【工場けんがく! 北関東ものづくり探訪】

車が流れる「遊園地」 スバルビジターセンター(群馬県太田市)

「まるで遊園地みたい」と歓声が上がる。リフトにボディーがつり下げられて運ばれる様子は圧巻だ=太田市で

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 富士重工業(東京)の企業城下町として、戦後、経済発展を遂げた太田市。スバル車の生産拠点、群馬製作所の主力の三工場があることから、ファンにとってはまさに聖地。矢島工場敷地内にあるスバルビジターセンターで月に一度、少人数向けの特別見学会が開かれている。

 守衛室で見学の旨を告げ、車を駐車場に止めると、戦後初の純国産ジェット練習機T−1「初鷹(はつたか)」の実物が存在感たっぷりに展示されていた。前身の航空機メーカー「中島飛行機」から続く歴史を背中に感じつつ、センターのドアを開けた。

 同社によると、矢島工場は東京ドーム十二個分の約五十五万平方メートルと、とにかく広い。人気のレガシィやインプレッサ、フォレスター、エクシーガを組み立てている。完成車の八割は海外向けで、ここから約百十カ国に輸出されるという。

 工場見学が始まったのは三十年ほど前。スバルの技術や歴史を紹介する施設として、二〇〇三年七月に開設したセンターは重要なポイント。県内をはじめ関東や信越地方を中心に年間約十万人が訪れ、その八割強が社会科見学の小学生という。

 所要時間は約二時間。まずセンターで製造工程を紹介した十六分間のDVDを見る。その後、アテンドと呼ばれる女性社員の引率で、スバル車の特徴である水平対向エンジンの仕組みを学び、往年の名車スバル360など十八台が並ぶ「展示ホール」などを回る。解説が分かりやすい。

 いよいよ作業現場へ。力強いごう音が鳴り響く鉄板の切断や、火花が飛び散る溶接組立、ボディーへの内外装の部品取り付けといった三つの工程を間近で見る。

 中でも内外装品の取り付けが印象的だった。工場二階の見学者用通路を進むと、天井からつり下げられた車のドアがガチャガチャと音を立てて目の前を流れていく。「まるで遊園地みたい!」。隣の女性から歓声が上がる。一階を見下ろすと、ボディーの前と横に分かれた作業員が部品を次々に取り付けている。手際の良さに時間を忘れた。

 息つく間もない見学が終わると、大きな深呼吸をした。言いようのない高揚感と満足感で満たされた。「今見た車は将来、海の向こうのどんな町を走るのかな」。真っ青に晴れ上がった空を見上げ、心が弾んだ。(美細津仁志)

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◆メモ

スバルビジターセンター 所在地は太田市庄屋町1の1。見学は平日の工場稼働日に行われ、10人以上の団体が条件だが、1カ月に1回、少人数特別見学会もある。車は北関東自動車道太田桐生ICから30分、東武太田駅から20分。最寄りのバス停は「マリエール太田前」で徒歩10分。問い合わせは=電0276(48)3101=へ。

 

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