MK2

MK2さんのプロフィール

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ニックネーム
MK2
自己紹介

 前回までのあらすじ。ふとしたことで幼女になってしまった42歳のコンビニ店長おっさん魔法が使えるらしいのだが、魔法の話はまだ出てこない。実はこれの前あたりにいいかげん魔法の設定どうにかしようと思ってひとつ書いたのだがボツにした。俺が書いた文章をボツにするのは極めて稀である。たいていなんでもかんでもアップしてしまう。魔法の内容はというと、魔法発注端末で発注したら使い魔が出てきたのたが、その使い魔の姿が42歳の俺で、なぜかそこに幼女の魂が宿ってしまうというものだった。42歳の俺の肉体に「ふぇ~」とか「ここどこぉ?」とか言わせてたらすごい虚無感出てきたうえに、読んでもだれも楽しくないと判断したため、アップをとりやめた。

 そんな日々である

 今日も店に行くとまたてんちょうせんようアイテムが増えていた。今度はかきかたえんぴつである。なにものかの悪意の深淵を見た思いがする。いつランドセルが登場するか気が気ではない。

 今日シフトは昼までだった。

 シフトが終わってからもぐだぐだしていて、軽くメシなど食っていたら、前回に登場した鈴木さんも上がってきた。仕事の話などしていたら不意に思い出した。

「あー、そういや今日ロウきゅーぶ!の最終巻の発売日だったんだよな……」

ロウきゅーぶ!ってあの?」

 どれのことかは知らないが、この世にロウきゅーぶ!は3種類もないと思う。ちなみに鈴木さんはオタである。わりと高い身長コンプレックスになっているのかなんなのかは知らないが、かわいいものが大好きであり、そのためいわゆる萌え系と呼ばれるアニメ守備範囲に入っている。そのせいで前回俺は塗炭の苦しみを味わった。

「おまえ知らないのか。あれ原作バスケ試合シーン、えらいおもしろいんだぞ」

きれいなおねえさんいっぱい出てきますもんね」

 いたずらっぽく言った鈴木さんだが、俺は衝撃を受けた。

 そうか。いまの俺の肉体からすれば、智花さんもおねえさんになってしまうわけか……。つまりこういうことか。智花おねーちゃーんとかゆって駆け寄っていくと、智花さんが小さい子供のことを無碍にできるはずもない。しか子供相手だから、練習直後の汗まみれの状態でも油断して接してくれるのではないか。そういえばぜんぜん関係ないけど、かなめもの代理とは同級生なのではないか。すごいな。なんだこの世界やばいぞ。

 智花おねーちゃん……悪くない……。

「……店長?」

 呼びかける鈴木さんの声で我に返った。危ない。新しい地平に目覚めるところだった。

「もう、店長ったら。ひどいロリコンですね」

 幼女なのかおっさんなのか、どっちかの扱いにかためてください。

しかし、困ったな」

「なにがです?」

「いや、本屋まで行けない」

「あー……」

 最寄りの本屋までは、通常、徒歩では行かない範囲にある。大人の足なら歩けないことはないだろうが、子供の肉体というのはすぐ疲れる。回復も早いが、こっちは気力の問題で、おっさん精神は、疲れて回復、また歩くとかに耐えられない。

「ちーっす。発注しにきましたー」

 そこへ店長補佐が店に来た。とりあえず田中さんとでもしておこう。

 ブログ本体にも何度か登場したが、見た目完全にギャルである。中身は仕事のできるアホである。むっちりとしている。好きな人にはたまらない体型だろうが、俺はロリコンなのであまり関係ない。

 バスを使うかどうか悩んでいると、鈴木さんが成り行きを話したらしい。

 起き抜けらしく、半分ボケた顔をした田中さんが言った。

「あー、自転車じゃないすか?」

「その手があったか

 意外にも気がつかなかった。俺にとって自転車とはスポーツのものだけであり、子供自転車実用品として使う、というのは気づきもしなかった。

「あたし車っすから店長ホームセンター乗っけてきますよ」

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 自転車売場に着く。品揃え的にはそこそこだ。最近ホームセンター自転車売場にも、ジャイアントエスケープとか平然と置いてあってびびる。だいたいいくら廉価品とはいえ、ホームセンタービアンキが置いてある未来を10年前に想像できただろうか。

 こんなことでも時代の変化というものを感じたりする。

「では、こちらなんかおすすめですね」

 鈴木さんが初老の店員を引き連れてやってきた。

 俺の目の前に差し出されたのは、全体これピンク色のドキドキプリキュア自転車。16インチ。補助輪つき。

 うん。わかってた。この流れになるってわかってた。わかってたよ!!

「これはちょっと……」

「どんなのがいいのかな?」

 俺の自我崩壊しない範囲で許せる選択肢は多くない。道すがらミニベロをどうにかこうにか改造して、この身長でも乗れるようにできないか、と考えていたが、おそらくトップチューブの長さの問題で絶望である。そうなると、BMX用以外にない。街乗りを考えるとシングルギアは厳しい。

「BMX用で、メインの用途は街乗りなのでギア必須フロントシングルでもかまわないんですけど、リアは7段は欲しいところです。そういうのありますかね」

「は?」

「ほんとはミニベロが欲しかったんですが、この身長ですから……どうにも。可能な限りホイールベースの短いようなやつがあればいいんですが」

 考えたことをそのまましゃべった。

 しゃべって、目の前の初老おっさんが固まってることに気づいてから、冷や汗が流れた。

 鈴木さんが俺を抱え込むようにして連れ去った。人通りの少ない階段の前で、指を立てて説教された。

店長、たるんでるんじゃないですか?」

「いや、つい……」

「お店のなかでは店長でもいいですけど、外じゃただの幼女なんですから!」

「悪い」

「というわけで、プリキュア買いましょう」

ちょっと待て」

 俺は、自転車売場に戻ろうとする鈴木さんの襟首を掴んだ。というのは俺のイメージの話で、客観的には、お姉さんの裾を掴む幼女である

「いくらなんでもそれは俺が耐えられない。傍から見れば問題ないかもしれないが、俺の自意識としては、ありゃ痛車だ」

かわいいんだからいいじゃないですか」

 よくねーよ。

「あー、店長ー」

 田中さんが呼んでいる。片手でピンク色の自転車を押している。

「買っときましたー。あ、ヘルメットはあたしのおごりなんでー」

「なにしてんだよ!」

「決まりそうになかったんでー」

 そうだった……こいつ気は回るんだけど、回る方向があさってだったんだ……。

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 その後、田中さん希望によりラーメン屋に寄った。屈辱のおこさまラーメンを食わされてから、店に戻った。連絡したのは田中さん鈴木さんか、すでに店には数名の女子バイトが待ち構えており、俺には逃げ場がなかった。

 ピンク色のヘルメットに青白ストライプ制服を着用した俺は、駐車場で、16インチ補助輪つきの自転車

を漕いだ。なんでこんな小さいサイズなのにクソ重いんだ。重量も確認せずに自転車を買うなんて。この世は子供にはやさしくない。

はい、そこでちりんちりんしてくださーい」

 ちりんちりーん。ハンドルについたピンク色のベルを鳴らした。

 補助輪ががたがたうるさい。

 これから、俺の日常の足はこれになる。

 せめて補助輪は外そう。俺はうつろな顔で自転車を漕ぎながら思った。

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 参考資料はこちらです。

http://item.rakuten.co.jp/nextcycle/pa-puri2013/?scid=af_pc_etc&sc2id=67889001

http://www.dena-ec.com/item/186088694?aff_id=ckk

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 というわけで、自転車も入手してますます便利になった幼女生活を送っています。このあいだ、アマゾンからプリキュアポシェットも届きました。俺は注文していません。以前おっさんだったときに使っていたカバンは確かに非常に使いづらく、この幼児用のポシェットは非常に体にフィットして使いやすいです。

 その事実が俺を打ちのめします。

 せめてアイカツのやつにしてほしかったです。