序盤の勢いそのままに、小泉ブームが起きた2001年参院選以来の「圧勝」を見すえる自民党。野党は都市部の複数区で下位争いをするのがやっとだ。朝日新聞社の終盤情勢調査をみると、自民党が若・壮年層にも広く浸透していることがうかがえる。
与党、過半数は確実参院選特集ページはこちら■経済政策、高い期待
自民は公示日(4日)とその翌日に行った序盤調査時の勢いを保ち、選挙区に立てた49人の候補のうち、45人が優位かやや優位に立っている。
選挙区で44人が当選した01年参院選と並ぶ大勝になりそうだが、今回の特徴は、自民に投票する人の構成が01年に比べて大きく変わっていることだ。
投票態度を明らかにした人のうち、選挙区で自民に投票すると答えた人を年代別に見てみると、01年の情勢調査に比べて若・壮年層の割合が伸びている。
もともと自民は高齢層の支持が厚めで、01年調査でも、自民に投票するという人は60代以上で5割を超え、20〜50代は4割台と少なめだった。
ところが今回は、自民に投票するという人が20代で54%、30代で55%に上り、70歳以上の52%を上回った。40代でも52%だ。
都市規模別にみても、01年と今とでは政令指定都市の増加や市町村合併があり単純に比較できないが、自民に投票するという人は、町村部より都市部の伸びの方が大きい。
こうした変化は、安倍晋三首相の経済政策への見方と関連しているようだ。
情勢調査と合わせて実施した世論調査で、安倍首相の経済政策について尋ねると、「期待できる」が40%、「期待できない」が36%だった。
「期待できる」は年代が若くなるほど高くなる傾向があり、若・壮年層が自民に投票するという傾向と重なる。地域別では、近畿と関東が高めとなり、北海道や東北でやや低かった。
一方、世論調査では自民党に対する「好き嫌い」を5段階で尋ねた。
最も多かったのは「好きでも嫌いでもない」だが、これを除くと、「好き」「どちらかといえば好き」の合計29%が、「嫌い」「どちらかといえば嫌い」の合計18%を上回った。
「好き」は九州や中国・四国などのほか、今回の参院選で自民の強さが目立つ地方の1人区を中心に高めとなった。
若・壮年層や都市部でのアベノミクス期待と地方で根強い自民人気が好調自民を支えているようだ。
■普天間・復興・TPP…重点区は激戦
強い自民にあって、優勢な展開に持ち込めていないのが1人区の沖縄、岩手、山形などだ。自民はこれらの選挙区を重点選挙区としているが、安倍政権の抱える「アキレス腱(けん)」ともいえる政策課題が争点になり、他の1人区とは情勢が異なっている。
沖縄では米軍普天間飛行場移設問題を巡り、安倍首相が16日、日米で合意した名護市辺野古を念頭に「普天間の一日も早い移設を実現していきたい」と発言。党公約でも「辺野古移設推進」を明記している。
だが、今回の調査をみると自民新顔は、「県外移設」を掲げる沖縄社会大衆党委員長の現職・糸数慶子氏に引き離されつつある。自民党沖縄県連も「県外移設」を主張するが、党本部との「ねじれ」に対して県民の理解は十分得られていないようだ。
岩手は東日本大震災からの復興をめぐり、民主党政権時の復興相で党を離れた無所属の現職・平野達男氏が実績を訴える。自民は93年の小沢一郎氏の離党後、95年参院選から推薦を含め6連敗してきたが、今回も平野氏に対して優位に立つことができていない。なお、小沢氏が党代表として率いる生活の新顔の元県議は苦しい。
安倍首相は政権交代後に環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を表明したが、各地の農業団体の反発は根強い。
その一つ、山形ではJA(農協)の政治団体・全国農政連の地方拠点である山形県農政連が、みどりの現職舟山康江氏を推薦している。元農水官僚の舟山氏は07年に民主から立候補し、自民候補を破って初当選。TPPには反対姿勢で、昨年民主を離党した。舟山氏は、吉村美栄子知事の後援会の支援も受けている。
もともと山形は自民王国だが、今回は自民が安定した戦いには至らず、つばぜり合いが続いている。
■複数区残る議席、目立つ民・共対決
野党は序盤と変わらず苦しい展開だ。選挙区の1人区だけでなく、複数区でも自公候補にリードを許し、残る議席をめぐって激しく争っている。
13〜14日に実施した参院選連続調査(3回目)で比例区投票先を聞くと、民主、維新、みんな、共産の4党が6%で並んだ。複数区の下位争いをしているのは主にこの4党だ。
2人区の京都や兵庫、福岡、3人区の埼玉、愛知、4人区の神奈川、大阪、5人区の東京などでぶつかり合っている。
中でも目立つのが「民・共」対決で、京都、神奈川、大阪などが焦点となっている。序盤調査では激しい競り合いを続ける選挙区が多かったが、引き続き予断を許さない情勢だ。
民主は10年の参院選で、すべての2人区を自民と分け合った。ところが今回は、大惨敗を喫した昨年末の衆院選のころに10%台だった支持率がさらに低下。有利な戦いを進めている2人区は北海道や長野、静岡などにとどまる。
3人区で比較的安定しているのは、前回2人を当選させながら、今回は現職で党政調副会長の大塚耕平氏に絞った愛知ぐらいだ。
2人を擁立していた5人区の東京でも公示直前に1人の公認を取り消したが、功を奏しているとは言えない状況だ。
一方、都議選で躍進を果たした共産は、安倍首相の経済政策や原発再稼働への批判票などを取り込み、今年春ごろから急速に支持を広げてきた。
こうした民主の弱体化と共産の伸長が「民・共」対決の背景にある。
維新は衆院選で野党第2党となったが、橋下徹・共同代表の旧日本軍の慰安婦をめぐる一連の発言などもあり、序盤に続いて有力なのは大阪の東徹・党総務会長ぐらい。
みんなも、序盤と同様に堅調なのは神奈川の元知事の松沢成文氏にとどまる。10年参院選の終盤情勢調査時に比べて無党派層を十分取り込めておらず、苦しい戦いが続いている。
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朝日新聞官邸クラブ