相変わらず為末さんのツイートが刺さります。
陰謀の黒幕はいない
陰謀論というのはどこでもあるけれど、比較的日本人は陰謀論が好きな民族ではないかという実感を持っている。自然に身を委ねるという感覚が強いからか、何か大きな抗えない力が自分たちを支配しているというアイデアが受け入れやすいのかもしれない。
— 為末 大 (@daijapan) July 16, 2013
少しずつ社会のおそらくはある程度中心にいる人たちに会うようになって、所謂すべてをコントロールできるような人は例えすごく地位が上の人であれ、いないんだなと思うようになった。みんなバランスを保った上で自分の活動をしている。
— 為末 大 (@daijapan) July 16, 2013
陰謀論というのは、ぼくが関わるメディアの世界でも頻繁に見聞きします。NHKは在日に支配されてる!とか。
が、詳しく中身を見ていますと、そうした「陰謀」は存在せず、むしろ、一人ひとりのプレーヤーは最善を尽くした結果、陰謀に見えてしまう状態が立ち現れる、という方が一般的です。
「韓流ドラマ」はなぜ多い?
たとえば「韓国ドラマがテレビで放映されまくる」という現象も、あれは単純に「安く放映できるから」という理由が背後にあるそうで。陰謀というか、むしろ経営上の合理的な判断の結果なわけです。
韓流ドラマが多すぎる、という声がネット上では大きかったものの、ここには経済合理性がある。昼の時間に情報番組を1本作るよりも、激安価格で作れるのだ。
(中略)「韓流ドラマってCSだと1本1万円ってのもあるんです。韓国側もとにかく露出をさせたいから、価格については譲歩します。局側からすれば、ここまで安く時間を埋められるから願ったり叶ったり。視聴率もそこそこは取れるし」(CS関係者)
昨日「前科44犯の障害者。マスメディアが隠蔽する「触法障害者」問題を知っていますか」という記事を書きました。
これもまた、黒幕がいて問題が報道されないというよりは、「微罪は報じない」というマスメディアの「構造的な問題」が背景にあります。記者の人々は悪気のかけらもない、しかし、問題が結果的に隠蔽されてしまう。悪者はいないんです。
「自分が社会から信頼されずして本当の情報は得られない」
為末さんはさらに突っ込んで、陰謀論者を切っていきます。
隠謀論の話を聞くと、そうであると誰かが言っているという話がほとんど。実際にどうだったのかという体験がない。切ない話だけれど、結局のところその為には社会的にある程度成功してその業界の上にのぼるしかない。中心から遠いひとほど隠謀論に根拠があるかどうかに気づきにくい。
— 為末 大 (@daijapan) July 16, 2013
インターネットでいくら情報がたくさんあるとはいえ、やっぱり直接の信頼関係の中で聞く話はネットには落ちていない。そしてその信頼関係は、自分の社会的地位と交友関係に影響される。自分が社会から信頼されずして本当の情報は得られない。
— 為末 大 (@daijapan) July 16, 2013
「自分が社会から信頼されずして本当の情報は得られない」。なんと真理を突いた言葉なのでしょう。
直接の信頼関係のなかから情報を得ることができない人たちは、いくらネットに「本当の情報」が溢れるようになっても、「いや、それは嘘だ!真実は他にある!」と主張します。たとえば上で説明した韓流ドラマの話ひとつ取っても、陰謀論者たちは「いや、やはり在日が支配しているんだ!」と追求の手を止めることはないでしょう。これもまた、構造的な問題です。
陰謀論者が「陰謀の不在」に気づくためには、自身の社会的地位を高め、意思決定者の人々と対等な信頼関係を築く必要があります。自分が上昇して初めて、そこには陰謀が存在しなかったことに気づけるのです。あぁ、残酷な話。
そんなわけで、ぼくは基本的に「陰謀」の存在は信じていません。ほとんどの場合、誰もが良心に従って行動した結果、たまたま陰謀と思えるような状態が浮き上がっているだけです。そう考えているので、陰謀云々といった主張はあまり関心が持てません。
関連本はこちらを紹介。陰謀論を歴史的に紐解き解説している一冊とのこと。ポチ。